早産児の呼吸補助のための鼻腔高流量療法

レビューの論点

早産児において、出生直後の呼吸補助に鼻腔高流量療法(ハイフロー)を使用した場合、他の非侵襲的呼吸補助と比較して、どのような利益と害があるか?

呼吸サポートとは何か?

早産児(予定日より早く生まれた)は、出生後すぐに呼吸のサポートを必要とすることが多い。赤ちゃんの気管に呼吸チューブを挿入することなく、非侵襲的な呼吸補助を行う。非侵襲的呼吸補助にはいくつかの種類がある。高流量タイプは、乳児の鼻孔内に装着されたチューブの2つの小さな突起から温風と酸素を供給するタイプである。高流量に代わる方法としては、より太いプロングやマスクを介して酸素を(流量ではなく)連続的に加圧する持続気道陽圧(CPAP)や、CPAPに加えてより高い圧力で酸素を注入することもある経鼻的間欠陽圧換気(NIPPV)がある。

本レビューで行ったこと

早産児における高流量呼吸補助の有益性と有害性を、他の非侵襲的呼吸補助と比較して評価した、十分にデザインされた研究を医学データベースから検索した。

わかったこと

早産児2,540人を対象に、出生直後の赤ちゃんの高流量呼吸補助と他の非侵襲的な方法を比較した13件の研究が見つかった。他に分類待ちの研究が9件、進行中の研究が13件ある。対象となった研究では、比較した治療法、使用した酸素の流量、大流量が効かない場合にCPAPを使用できるかどうか、より重度の呼吸困難のある赤ちゃんにサーファクタント(小さな気道がつぶれるのを防ぐために使用される薬)を使用する方法などが異なっていた。

わかったこと

早産児に出生後すぐに高流量呼吸補助を使用した場合、CPAPやNIPPVと比較して、死亡や気管支肺異形成(早産児の慢性肺疾患)にほとんど差がない可能性がある。高流量呼吸補助はおそらくCPAPに比べて治療の失敗を増加させる。たとえば、高流量呼吸補助で治療された赤ちゃんは、より高い酸素濃度を必要としたり、血液検査の結果が悪かったりしたかもしれない。CPAPは100人中10人以上の赤ちゃんに高流量呼吸補助より効果があった。しかしながら、高流量呼吸補助を用いても、挿管(呼吸チューブの留置)が必要になる可能性には、おそらくほとんど違いはない。高流量はおそらく、CPAPやNIPPVに比べて乳児の鼻へのダメージが少なく、おそらく気胸(肺と胸壁の間の空間に空気がたまる)のリスクも減少した。これらの研究に含まれる極早産児(妊娠28週以前に生まれた)は非常に少なかった。したがって、極早産児に対する出生直後の高流量呼吸補助の有益性と有害性については、依然として不明である。

エビデンスの限界は何か?

全体として、これらの調査結果に対する信頼度は非常に低いか中等度であった。結果の信頼性は限定的である。その理由としては、研究に参加した臨床医が赤ちゃんがどの治療を受けたかを知っていたこと、1件の研究では1種類の呼吸補助が有効であったが他の研究では比較対照となる呼吸補助が有効であったため結果のばらつきがあったこと、いくつかの結果ではイベント数が少なくグループの比較が困難であったことが挙げられる。

本エビデンスはいつのものか?

検索結果は2022年3月12日時点で最新のものである。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子 阪野正大 翻訳[2023.12.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD CD006405.pub4》

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