がん患者および緩和ケアを受けている患者におけるオピオイド使用に伴う腸機能障害に対するμオピオイド拮抗薬

背景

オピオイドは重度疼痛の治療に用いられるモルヒネ様薬剤であるが、使用による副作用を伴う。オピオイド誘発性腸機能障害(OIBD)は便秘、排便障害、腹部膨満および胃内容物の逆流増大を指す用語であり、症状が重度の場合には、腸機能の改善を目的に、オピオイド治療を制限する場合もある。OIBDはがん患者および緩和ケア(治癒が期待できない、余命が限られた状態の患者に行われる全人的ケア)を受けている患者に多くみられる。便秘薬はOIBDの第一選択薬として用いられることが多いが、効果が得られない場合もある。μ(ミュー)オピオイド拮抗薬はOIBDに特異的な治療薬であり、臨床ガイドラインでは、便秘薬による奏効がみられない場合に使用が推奨されていることがある。

試験の特性

この最新のレビューは、がん患者および緩和ケアを受けている患者に対するOIBDの管理として、およびこのような患者のうち便秘薬による効果がみられなかった場合に対して用いられる、μオピオイド拮抗薬の有効性と安全性についてこれまでに得られた知見を検討することを目的とした。副作用としてオピオイドによる鎮痛効果の低減が考えられることから、μオピオイド拮抗薬が鎮痛作用に及ぼす影響を検討した。検討にあたっては、もっとも信頼性の高いエビデンスが得られるランダム化試験(RCT)のみを対象とした。RCTでは、ナルデメジン、メチルナルトレキソン、ナロキソンなどのμオピオイド拮抗薬を評価していることを条件とした。試験の対照群は、プラセボ群(活性作用が認められない物質)、通常ケア群、異なる種類のμオピオイド拮抗薬などによる別の治療群であった。

主要な結果

2017年8月までに行った検索の結果、成人患者1,022例を対象とした試験8件が見つかった。がん患者を対象に評価したμオピオイド拮抗薬は、経口薬であるナルデメジンとナロキソンであり、オピオイド治療薬(疼痛用)と併用投与であった。注射薬であるメチルナルトレキソンは患者のほとんどが進行がんを有していた緩和ケアで評価された。

試験結果は、ナルデメジンまたはメチルナルトレキソンをプラセボと比較したものであった。ナロキソンについては、プラセボまたはオピオイド治療薬のみと比較されていた。

試験によって得られたエビデンスの質を評価した結果、非常に低い~中程度と判定した。「質が非常に低い」とは、結果の信頼性が非常に不確かなものであることを意味し、「質が高い」とは結果の信頼性が非常に高いことを意味する。試験方法の記載が少ないなど、試験デザインに関する問題がみられた。

24時間以内および最大2週間の排便

ナルデメジンによる排便回数の増加が最大2週間にわたってみられたという中等度のエビデンスが認められた。試験では、2週間時点でナロキソンの排便に及ぼす影響は検討されなかった。メチルナルトレキソンは排便回数の増加または投与後24時間以内の便通(軟便)をもたらし、その効果は最大2週間にわたってみられた(中等度のエビデンス)。

鎮痛

ナルデメジンによる鎮痛効果への影響はないというエビデンスの質は中等度であった。試験では、ナルデメジンによる疼痛強度の変化は測定されなかった。ナロキソン単独投与による鎮痛効果への影響はないというエビデンスの質は低いものであった。オピオイド治療薬と併用投与したナロキソンでは、鎮痛効果に影響はないというエビデンスについては、中等度の質であった。メチルナルトレキソンによる鎮痛効果の影響はないというエビデンスの質は、中等度~低いものであった。

重篤な副作用(入院を必要とする、生命を脅かす、あるいは致死的な副作用)およびその他の副作用のリスク

ナルメデジンとナロキソンをオピオイド治療薬と併用投与しても重篤な副作用のリスクは増加しないというエビデンスの質は低いものであった。ナルデメジンについては同薬との関連についての記載はないものの、試験中に5件の重篤な副作用が認められた。メチルナルトレキソンはおそらく重篤な副作用のリスクを増加しないと考えられた(中等度のエビデンス)。

ナルメデジンが副作用のリスクを増加させるというエビデンスの質は中等度であった。オキシコドン(オピオイド鎮痛薬)との併用投与によるナロキソンは、副作用のリスクを増加させないというエビデンスの質は中等度であった。メチルナルトレキソンが副作用の全体的なリスクを増加させないというエビデンスの質は低かった。メチルナルトレキソンは腹痛および鼓腸(腹部膨満感)のリスクを増加させた。

結論

ナルデメジンは、OIBDを伴うがん成人患者において、2週間にわたり腸機能を改善する一方、副作用のリスクを増加させ、メチルナルトレキソンは緩和ケアを受けている患者の腸機能を改善したことを示す中等度のエビデンスが認められた。メチルナルトレキソンは副作用を増加させなかったという低い質のエビデンスが認められ、副作用の発現は低くないものと考えられる。このレビューの結果は、高い質のエビデンスから得られたものではないため、解釈に注意を要する。小児を対象とした試験はなかった。

訳注: 

(訳注)メチルナルトレキソンには国内外でまれではあるが重篤な有害事象に関する警告があり、副作用に関して一部加筆しております。《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)今泉 眞希子 翻訳、佐藤 恭子(川崎市立井田病院川崎総合ケアセンター)監訳 [2018.10.10] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD006332》

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