統合失調症に対するテストステロン

重篤な精神疾患である統合失調症は、あらゆる社会、文化圏でみられ、約1%の人々が罹っている。誤った思い込み(妄想)、誤ったまたは曲解された認知(幻覚)のようなこの疾患の劇的な症状を緩和するために、多くの治療選択肢が利用できる。統合失調症では、感情の離脱や感情鈍麻のようなその他の症状も多くみられ、抗精神病薬での治療にあまり反応しない。さらに、一部の人々では、適切な抗精神病薬の使用にも関わらず妄想や幻覚の発現が継続し、しばしば補助治療が用いられる。このような補助治療には、エストロゲンやテストステロンなどの性ホルモンが含まれる。

統合失調症患者に対する標準的な抗精神病薬の補助療法としてのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)/テストステロンの効果についてレビューし、関連する3件の小規模短期試験を発見した。すべての試験で、抗精神病薬+DHEAと抗精神病薬およびプラセボとを比較した。結果は、ほとんどのアウトカムが、有意ではないまたは矛盾しているため結論に達しておらず、より大規模で決定的な試験を行うべきである。しかし現時点では、統合失調症患者は、適切に設計された実験研究の下でのみこの実験的な治療を受けることに同意すべきである。これらの試験において、日常診療で用いるべきということを示すものは何も発見できなかった。

著者の結論: 

結果は、ほとんどのアウトカムが、有意ではないまたは矛盾した結果のどちらかであり、結論に達していない。現時点では、統合失調症患者に対するDHEAの補助療法は、実験的な治療にしておくべきである。

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背景: 

近年、エストロゲンやテストステロンなどの性ホルモン、またはその誘導体が、統合失調症に関連する持続的症状の治療に対する関心の焦点となっている。

目的: 

標準的な抗精神病薬に対する補助療法としてのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)/テストステロンの効果についてレビューすること。

検索方法: 

Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2007年1月)を検索した。

選択基準: 

DHEA/テストステロン+標準的な抗精神病薬治療と、標準治療単独とを比較したすべてのランダム化臨床試験を組み入れた。

データ収集と分析: 

それぞれ試験を選択し、データを抽出した。2値データには、固定効果モデルを用いて、ITT解析に基づき相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。重み付け平均差の値を用いた連続データを、固定効果モデルを用いた95%信頼区間と共に示した。

主な結果: 

関連する3件の小規模短期試験を発見した(総数n=126)。臨床全般印象度のデータは多義的であった(n=27、1件のRCT、WMD -0.43 CI -0.9~0.1)。陽性陰性症状評価尺度(PANSS)の平均総スコアでは、DHEA+抗精神病薬群と抗精神病薬およびプラセボ群との間に有意はなかった(n=82、2件のRCT、WMD -4.16 CI -13.8~5.5)。PANSS陽性スコアは多義的であった(n=55, 1件のRCT、WMD -1.00 CI -3.8~1.8)。陰性症状に関する陰性症状評価尺度(SANS)の2値データは、DHEA+抗精神病薬群で良好な結果を示した(n=30、1件のRCT、RR 0.23 CI 0.1~0.6、NNT 2 CI 2~3)が、PANSS陰性スコアでは、比較群間で有意はなかった(n=55、1件のRCT、WMD -2.30CI -6.4~1.8)。両群の約17%が早期に脱落した(n=64、2件のRCT、RR 0.80 CI 0.3~2.4)。錐体外路症状に対するSt Hans錐体外路症状評価尺度のデータは、DHEA+抗精神病薬群で良好な結果を示した(n=30、1件のRCT、WMD -5.00 CI -8.8~-1.2)が、アカシジア評価尺度は多義的であった(n=34、1件のRCT、RR 2.67 CI 0.3~23.1)。パーキンソン病様運動障害の評価尺度は、用いたアウトカム尺度により、同じ試験内で異なった。生活の質は、DHEAの使用に影響されないと考えられた(n=55、1件のRCT、WMD 6.20 CI -1.4~13.8)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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