避妊のために用いる子宮内避妊用具(IUD)に関連した、月経過多や月経痛に対する薬

背景

女性が子宮内避妊用具(IUD)の使用を中止する最も多い理由は、月経時の出血量が多いことと痛みである。痛み止めやその他の薬、または他の方法で、IUDの使用に関連する出血や痛みを軽減できるかどうかを調べるためにレビューを行った。

研究の特徴

本エビデンスは2021年1月現在のものである。IUD使用に関連する月経過多や月経痛の治療や予防について調べた研究を対象とした。治療法は、その他の薬、無治療あるいはプラセボ(偽薬)と比較された。

主な結果

このレビューには、計3,689人の女性を対象とした21件の研究が含まれている。11件の研究では月経過多や痛みの治療について検討し、10件の研究ではその予防について検討していた。ほとんどのエビデンスは、参加者の少ない単独の研究から得られたものである。得られた研究結果は、確実性が乏しい。確実性が限定的になったのは、非常に少ない人数しか参加していない研究があったり、介入内容が多様であったり、研究の実施方法について明確な報告がなかったりするためである。

月経過多の治療

銅付加IUD

ビタミンB1は、月経の出血がある期間、少量でも出血が認められる日数、1日あたりのナプキン使用枚数を減少させるかもしれない。メフェナム酸はトラネキサム酸と比較して、出血量を減らせるが、出血する期間を短くすることはできないかもしれない。ナプロキセンは、銅付加IUDに伴う出血量を減らさないかもしれない。

レボノルゲストレル付加IUD(IUS)

レボノルゲストレル付加IUD使用者において、ウリプリスタールは出血する期間を短くしないかもしれない。

種類不明のIUD

使用したIUDの種類が報告されていなかった1件の研究では、メフェナム酸は月経の出血量を減らさないかもしれないことがわかった。

月経痛の治療

銅付加IUD

トラネキサム酸やジクロフェナクナトリウムによる治療では、銅付加IUDに伴う痛みの発生を抑えることができないかもしれない。

種類不明のIUD

ナプロキセンは、タイプ不明のIUDに伴う痛みを軽減するかもしれない。

月経過多の予防

銅付加IUD

トルフェナム酸は月経過多を防ぐかもしれないが、イブプロフェンはプラセボと比較して月経の出血量と期間にほとんど差がなかった。アスピリンは、パラセタモール(アセトアミノフェン)と比較して月経過多の発生を防ぐことはできないかもしれない。

レボノルゲストレル付加IUD(IUS)

トラネキサム酸、エストラジオール、ナプロキセン、ミフェプリストンに関する研究では、レボノルゲストレル付加IUD使用に伴う月経過多を防げるかどうかは判断できなかった。

月経痛の予防

銅付加IUD

トルフェナム酸およびイブプロフェンは、プラセボと比較して月経痛の予防に有効ではないかもしれない。

著者らの結論

銅付加IUD使用者の月経過多は、ビタミンB1とメフェナム酸で治療することができるかもしれないが、トラネキサム酸とジクロフェナクは月経痛を抑えることができないかもしれない。レボノルゲストレル付加IUDの使用者において、ウリプリスタールは月経の出血量を減らしたり月経過多を防いだりしないかもしれない。トルフェナム酸は、月経過多を防げるかもしれないが、レボノルゲストレル付加IUDに伴う痛みは防ぐことができないかもしれない。エビデンスに対する確実性は低度か、非常に低度であった。IUD使用に伴う月経過多や月経痛を治療・予防するために有効な薬について、より質の高いエビデンスを得るためには、今後、より多くの研究が必要である。さらなる研究によって得られたエビデンスは、このレビューの結果を変える可能性がある。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、阪野正大 翻訳 [2022.09.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006034.pub3》

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