血栓後症候群の治療のためのルトシド

背景

下肢の静脈にできる血栓は頻度の高い病態であり、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis :DVT)と呼ばれている。DVT患者の3人に1人は、血栓症後症候群(post-thrombotic syndrome:PTS)として知られる合併症を発症する。この症候群には、患側下肢の進行性の腫脹、疼痛、痙攣、熱感、穿痛感、掻痒感が含まれる。色素沈着と静脈瘤の増加による皮膚の黒ずみ、発赤、皮膚掻痒感も起こりうる。現在、PTSの主な治療法は弾性ストッキングの着用である。しかし、患者はストッキングを不快に感じることが多いため、症状を治療するために経口薬の服用を好む場合がある。ルトシドは薬草療法であり、静脈に影響を及ぼす他の病態(慢性静脈不全)に対する有効性が示されている。

試験の特性および主な結果

本レビューの目的は、ルトシドがPTSの治療に有用であるかどうかを検証するため、既存の文献を評価することである。また、治療による副作用があるかどうかも調査した。DVT後のPTSの治療にルトシドを使用している試験について、すべての既存のデータベースを検索した(2018年8月21日現在まで)。2名のレビュー著者が独立して、組入れについて試験を評価し、規定の基準に従って結果を抽出した。合計患者233例を含む適切な3試験、本レビューには含まないが、不適切な6試験を同定した。

試験は小規模であり、非常に異なる方法で実施されたため、統合することはできなかった。試験では、ルトシド(プラセボ[不活性製剤])、弾性ストッキング単独またはルトシドとの併用、ヒドロスミン(血管組織に作用する血管活性薬)を用いて様々な比較が行われた。また、異なる用量のルトシド(1日900mg〜2000mg)も使用された。試験から、ルトシドを用いた治療によってPTSの症状や徴候が改善すること、また、副作用に差があることを示す明確な科学的根拠(エビデンス)は認められなかった。下肢潰瘍の発生は、対象としたいずれの試験でも報告されていない。

エビデンスの質

GRADE法を用いた全般的なエビデンスの質は、参加者および研究者ともに盲検化されていないため、低かった。これは、研究者および参加者の双方が使用した薬剤が何かを知っていたことを意味し、このことが結果に影響した可能性がある。本レビューの所見に寄与したのは、小規模な3件の試験のみであったため、エビデンスの質はさらに限定的なものとなった。主観的スコアリングシステムはPTSの症状を把握するために使用されたため、評価者は介入について盲検化されるべきであった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《  CD005625.pub4》

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