成人と小児のアトピー性湿疹の改善を目的とする除去食療法

アトピー性湿疹は、先進国における小児期の最も一般的な炎症性皮膚疾患である。アトピー性湿疹は、遺伝的要因と環境的因子の組み合わせが病因であると考えられている。アトピー性湿疹は重症度が異なり、多くの場合は1時間以上持続し、細菌感染やウイルスなどの合併症を生じることがある。アトピー性湿疹の患者の家族だけでなく、医療サービスにも大きな経済的負担となる。現在では、アトピー性湿疹の治療法はないが、症状をコントロールするために幅広い治療法が用いられている。そうした治療法の1つは、食事に含まれる牛乳など特定の食品が湿疹を悪化させるという考えに基づく療法で、こうした食品を除去する食事療法である。このレビューに実施する理由は、アトピー性湿疹の短期的管理で食事より様々な食品を除去する有用性が不明確なためである。

研究の全体的な質は低かった。レビューの主な結果から1件の研究では、卵に特異的IgE抗体陽性が血液中で確認された卵アレルギーの疑いがある乳児を対象に、卵を除去した食事を用いたいくつかのエビデンスが得られていることが示唆された。除去食と通常食を比較した他の研究では、参加者が問題の食品に対するアレルギー反応性を確認するテストを受けていなかった。検査未実施の被験者では、食事からの牛乳の除去、成分栄養剤(アミノ酸、炭水化物、脂肪、ミネラルやビタミンのみを含有する液体食)、または「食品数が少ない食事」には、アトピー性湿疹を改善させる有用性はほとんど認められないと考えられる。

3件の研究では、アトピー性湿疹の人にアレルギーを起こす可能性のある大豆を主に用いた代替食を使用した。

除去食への遵守は容易ではない。この研究は異なる集団で実施され、アトピー性湿疹の重症度について記述した研究は1件のみであった。多くの研究から得られた重症度の変化の臨床的な関連性は不明である。

著者の結論: 

卵に対して特異的IgE陽性が疑われる卵アレルギーの乳児に、卵を除去した食事が有用な可能性がある。無作為に選んだアトピー性湿疹患者を対象に、様々な除去食を用いる根拠を示したエビデンスが殆ど得られていないが、最初からその物質に対するアレルギーを持っていなかったことが理由である可能性がある。有用性について得られていないのは、研究が小規模なために報告が不十分であったことが原因である可能性がある。既に食物アレルギーが認められている被験者を中心に、今後研究が適切に行われるべきと考える。また、食品アレルギーが改善された幼児と、年長児/成人との区別をすべきでると考える。

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背景: 

アトピー性湿疹(AE)は、かゆみのある赤い発疹を特徴とする非感染性慢性炎症性皮膚疾患である。

目的: 

既存のアトピー性湿疹の治療での除去食の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Skin Group Specialised Register(~2006年3月)、コクラン・ライブラリ(2006年第1号)内のCochrane Central Register of Controlled trials(CENTRAL)、MEDLINE(2003年~2006年3月)、EMBASE(2003年~2006年3月)、LILACS(~2006年3月)、PsycINFO(1806年~2006年3月)、AMED(1985年~2006年3月)、ISI Web of Science(2006年3月)、www.controlled-trials.com、www.clinicaltrials.govおよびwww.nottingham.ac.uk/ongoingskintrials(2006年3月)を検索対象とした。製薬会社には、適宜レビューや未発表の試験について問い合わせを行った。

選択基準: 

医師の診断を受けたアトピー性湿疹のある患者。

データ収集と分析: 

2人の独立した著者が研究の選択および研究方法の質について評価を行った。

主な結果: 

被験者合計421例が参加した9件のランダム化比較試験が確認され、このうち6件は卵と牛乳を除去した研究(N = 288)、1件は少数食に関する研究(N = 85)、また2件は基本食に関する研究(N = 48)であった。

無作為に選ばれたアトピー性湿疹患者を対象として、卵と乳製品を除去した食事の有用性は認められないと考えられる。また、無作為に選ばれたアトピー性湿疹の症例で、基本食または少数食を用いることについて有用であるというエビデンスは認められていない。卵に特異的IgE陽性の疑いがある乳児では卵を除去した食事が有用である可能性がある。1件の研究では、除去食と通常の食事とを比較し、小児の51%で表面積に大幅な改善が認められ(RR:1.51、95%CI:1.07~2.11)、また表面積および重症度スコアの変化について、除去食と通常の食事とを比較し6週間後(MD:5.50、95%CI:0.19~10.81)および治療終了時(MD:6.10、95%CI:0.06~12.14)に有意な改善が認められた。

研究方法が煩雑であったことから、これらの研究を解釈することが困難となった。ランダム化割付けの隠蔽性が不十分であり、盲検化を実施せず、脱落率が高く、更にITT解析を実施していないことから、これらの研究の解釈には十分な注意が必要であることが示唆される。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.26]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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