重症潰瘍性大腸炎の寛解導入を目的とするシクロスポリンA

著者の結論: 

重症潰瘍性大腸炎に対し、シクロスポリンが標準的治療単独よりも有効であるとするエビデンスは限定的である。シクロスポリンの比較的早い反応は、短期的な使用としては魅力的であるが、シクロスポリン誘発性の腎毒性などの有害事象がさらに明らかになることも考えられ、長期的な利益は不明である。重症潰瘍性大腸炎に対するシクロスポリン療法についての生活の質、経費、長期的な結果に関するさらなる研究が必要である。

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背景: 

潰瘍性大腸炎(UC)は、寛解と悪化を繰り返しながら生涯にわたって慢性的経過をたどることが特徴である。患者の約15%はその疾患過程のある時期に入院を必要とする重度の増悪を経験する。これらの患者は従来、静注副腎皮質ステロイド薬によって治療されているが、その奏効率は約60%である。通常、ステロイド療法に奏効しない患者は、大腸の外科的切除(直腸結腸切除術または結腸切除術および肛門吻合術)を必要とする。このような外科的処置によって患者は本来、この疾患から回復するが、回腸嚢炎などの合併症を伴う。重症潰瘍性大腸炎に対する代替療法はほとんど存在しない。免疫抑制薬(アザチオプリンなど)の作用の発現は遅いことから、通常は効果がない。抗生物質は有効性が明らかにされておらず、インフリキシマブなどの生物療法は未だに検討中である。重症の潰瘍性大腸炎(UC)の患者に対するシクロスポリンA(CsA)の導入は、以前は外科的な選択肢のみに限られていた患者に対する代替療法となっている。シクロスポリンは主に炎症の進行に不可欠なTリンパ球の機能を阻害して作用する。他の多くの免疫抑制薬とは異なり、CsAは他の造血細胞の活性を抑制せず、骨髄抑制を誘発することもなく、また迅速に作用が発現する。本レビューは、重症UCに対するCsAの有効性および安全性をシステマティックに評価することを目的とする。

目的: 

本レビューは、重症潰瘍性大腸炎の患者に対するシクロスポリンAの有効性を評価することを目的とする。

検索方法: 

コクラン・ライブラリ(2008年、第2号)、EMBASE(1980年~2008年)、MEDLINE(1966年~2008年)を電子的に検索した。同定したすべての研究の参考文献をハンドサーチし、選択した各試験の第一著者に問い合わせた。

選択基準: 

特発性潰瘍性大腸炎の寛解達成および寛解維持を目的としてシクロスポリンAをプラセボまたは無介入と比較しているランダム化臨床試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独自に各試験の質を評価し、選択した試験からデータを抽出した。相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。レビューアが、アウトカム指標に対するITT解析を引き受けた。

主な結果: 

2008年7月に実施された最新の文献検索から、新たな試験は同定されなかった。選択基準を満たしたランダム化比較試験はわずか2件が同定されたにすぎない。試験デザインおよび患者集団に重大ながあったため、これらの試験2件を解析のための統合はできなかった。最初の試験では、患者11例で静注シクロスポリン(4mg/kg)が投与され、9例でプラセボが投与されていた。治療群の患者11例のうち奏効がみられなかったのは2例であったのに対し、プラセボ群では9例のうち9例で奏効がみられなかった(RR 0.18、95%CI 0.05~0.64)。しかし、治療群11例のうち3例およびプラセボ群9例のうち4例でそれぞれ最終的に結腸切除術が施行されており、経過観察期間は1ヶ月未満であった。2番目の試験では、患者15例が静注シクロスポリンで治療され、患者15例が静注メチルプレドニゾロンで治療されていた。シクロスポリン群の患者15例のうち5例で奏効はみられず、対してメチルプレドニゾロン群では15例のうち7例で奏効がみられなかった(RR0.71、95%CI 0.29~1.75)。1年後、シクロスポリン群の治療に奏効した9例のうち7例は依然として寛解期にあったが、対するステロイド群では8例のうち4例が寛解期にあり(p>0.05)、結腸切除術を受けた患者の割合は両群とも同様であった。2試験ともシクロスポリン群の奏効に至る平均日数は短かった(7日および5.2日)。これらの結果は、比較のために評価された試験数も患者数も少なく、経過観察期間も限られていた(試験1件では数週間、別の試験では1年)ことから、慎重な解釈が必要である。試験では、シクロスポリン中止後に回復していたが異なる有害反応が報告されていたことから、有害事象の発現についての正確な評価は困難であった。レビューした試験には、結腸切除術を回避するためにシクロスポリンが標準療法よりも有効であるというエビデンスはなかったが、サンプルサイズが小さく、このアウトカムもまれであるため、この薬剤の効果を除外することはできない。最近の研究は他にも、生活の質、経費、シクロスポリン療法の長期的な結果に関するデータが欠如していることから限界がある。

訳注: 

監  訳: 柴田 実,2009.2.24

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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