HIV感染症とエイズの治療についての本レビューでは、生薬の使用を支持する説得力あるエビデンスは特定されていない。

HIV感染症またはエイズの人々は、しばしば代替療法や補完療法を求める。これらの治療法に関する研究は多く存在するが、検証された治療法において有益な効果の訴求を裏づけるために必要な科学的基準を満たした臨床試験はほとんどない。本レビューでは、HIV感染者または下痢症状が認められるエイズ患者を対象に8種の生薬を検討し、プラセボと比較したランダム化臨床試験9件を特定した。本結果は、SPV30と呼ばれる生薬製剤が、無症状のHIV感染者の疾患進行を遅らせるのに有用である可能性を示した。中薬(中医学の薬草療法)のIGM-1は、無症状のHIV感染者の生活の質を改善すると考えられる。 別の生薬化合物であるSHは、抗レトロウイルス薬との併用により抗ウイルス効果の増大を示した。南アフリカの生薬製剤であるSP-303は、下痢症状が認められるエイズ患者において、便異常の発生頻度を減少させる可能性がある。検証した他の生薬はプラセボと変わらなかった。しかし、これらの試験は患者数が少なくエフェクトサイズはかなり小さかったため、効果の検討には注意が必要である。ある臨床試験では、生薬の使用は、胃腸の不快感などの有害作用と関連した。結論HIV感染症およびエイズの治療に関する本レビューにおいて、同定された生薬の使用を支持する説得力のあるエビデンスは存在していない。エビデンスの信頼性を確保するために、さらに大規模でより頑健なデザインの試験の実施が必要である。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/) [2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD003937.pub2】

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