論点
双子、三つ子、またはそれ以上の赤ちゃんを妊娠している女性は、高い合併症のリスクに直面している。多胎だと、女性だけでなく赤ちゃんも、妊娠中、出産時および出産後のリスクが高まる。例えば、出産前や出産後に赤ちゃんが亡くなる可能性が高い、早産になる可能性が高い、赤ちゃんが重症で困難な状態が長引くことがあるなどである。1人以上の胎児の生命を終了させることで妊娠中の胎児の数を減らすことができる。これを減胎という。この介入は、残された胎児または胎児たちの健康状態を改善することを目的としている。親や医療従事者にとって、胎児の数を減らすことがより良い結果につながるのか、どのようなリスクがあるのかを明確に示すエビデンスが必要である。
重要である理由
減胎は、親にとって非常に難しい決断である。親は、考えられる結果の全体像を把握する必要がある。残る胎児や胎児たちに利益をもたらす可能性があるかどうか、どのようなリスクがあるかを示す研究がなければ、完全に情報を得た上での選択をすることは困難である。
得られたエビデンス
これに関するコクランレビュー(検索日:2015年7月31日)の研究は見つからなかったため、減胎術後に残った胎児や胎児たちがより良いアウトカムが得られるのか、この処置にリスクがあるのかはわからない。他のタイプの研究からのエビデンスは存在するが、データの意味を解釈するには問題がある。
結論
現時点では、胎児を減らすことが、残された胎児にとってより良い結果につながるかどうか、またどの程度の良い結果につながるかどうかは、はっきりしない。どんなアウトカムが改善され、どのようなリスクが発生するかはわからない。将来的には、親の希望を考慮し、結果を追跡する別のタイプの研究で、より良いイメージを得ることができるかもしれない。それまでの間、両親は助産師や医師と話し合った上で、減胎という選択肢を望むかどうか判断することができる。親が介入をどれだけ受け入れ、どのようなアウトカムを期待しているのかを考慮に入れた議論が必要である。
《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳 [2020.11.03]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003932.pub3》