I期子宮内膜癌に対するアジュバント放射線治療

I期(初期)子宮内膜癌の女性の再発リスクは低い。手術単独で治療された女性のうち手術後に再発するのは10%未満である。再発リスクは、侵襲性の強い細胞タイプ(グレード3)や筋肉への深部浸潤がある(IC期)などの高リスク因子の女性の一部では有意に高くなる(約2倍)。手術後の外照射療法(EBRT)により、一回目の骨盤内再発リスクが手術単独に比べて約3分の2低下するが、死亡リスクは低下しない。 EBRTは治療に関連した持続的副作用という特有のリスクを伴うため、ルーチンの使用はI期子宮内膜癌では避けるべきである。しかし、得られたエビデンスから、高リスクのI期子宮内膜癌女性ではEBRTによる利益がある可能性を否定はできない。腟密封小線源療法(VBT)は、局所再発の減少に有用であると考えられ、EBRTよりも副作用が少ない可能性がある。

著者の結論: 

EBRTにより局所再発リスクが低下したが、癌関連死および総生存に有意な影響はなかった。EBRTは罹病率および生活の質の低下に有意に関連していた。高リスクI期子宮内膜癌に対しアジュバントEBRTによる生存の優位性は確認できなかったが、このサブグループのメタアナリシスでは、検出力が弱く、中~高リスク女性に及んでいたことから、高リスクサブグループにいくらか利益があるかもしれないことは否定できない。EBRTは合併症のない低リスク(IA/Bグレード1/2)子宮内膜癌の治療に用いた場合、子宮内膜癌の生存に対し有害な作用を及ぼすおそれがある。中リスクから中~高リスク群では、EBRTに比べてVBT単独の方が腟コントロールを確実にするのに適切であると考えられる。真に高リスクである病変に対する治療方針を示すため、さらなる研究が必要である。また、リスクの定義を標準化すべきである。

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背景: 

本レビューは、2007年第2号発表のコクラン・レビューの更新である。子宮摘出後のI期子宮内膜癌における放射線療法[骨盤外照射療法(EBRT)と腟内密封小線源療法(VBT)の両方]の役割について、議論が続いている。

目的: 

I期子宮内膜癌に対する手術後のアジュバント放射線治療の有効性を評価すること

検索戦略: 

2005年末までのCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASEおよびSpecialised Registerで原著レビューでの検索に加え、本更新では2012年1月まで検索を延長した。

選択基準: 

I期子宮内膜癌女性を対象に、術後放射線療法なしまたは術後VBTと、術後アジュバント放射線治療(EBRTまたはVBT、あるいはその両方)とを比較したランダム化比較試験(RCT)を選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験を評価し、特別に作成されたデータ収集の書式にデータを抽出した。主要アウトカムは総生存であった。副次アウトカムは、子宮内膜癌関連死、局所再発および遠隔再発であった。Cochrane Review Manager Software 5.1を用いてメタアナリシスを実施した。

主な結果: 

8件の試験を選択した。7件の試験(女性患者3,628名)はEBRTをEBRTなし(またはVBT)と比較し、1件の試験(女性患者645名)はVBTを追加治療なしと比較していた。8試験中6件は質が高いと判断した。無イベント期間データはすべての試験およびすべてのアウトカムについて入手できたわけではなかった。 I期子宮内膜癌では、EBRT(VBT併用または併用なし)により、EBRTなし(またはVBT単独)に比べて局所再発が有意に減少した[無イベント期間データ:5試験、女性患者2,965名、ハザード比(HR)0.36、95%信頼区間(CI)0.25~0.52;二値データ、7試験、女性患者3,628名、リスク比(RR)0.33、95%CI 0.23~0.47]。局所再発のこのリスクの減少からは、総生存の改善(無イベント期間データ、5試験、女性患者2,965名、HR 0.99、95%CI 0.82~1.20;二値データ、7試験、女性患者3,628名、RR 0.98、95%CI 0.83~1.15)、子宮内膜癌関連生存の改善(無イベント期間データ、5試験、女性患者2,965名、HR 0.96、95%CI 0.72~1.28;二値データ、7試験、女性患者3,628名、RR 1.02、95%CI 0.81~1.29)、遠隔再発率の改善(二値データ、7試験、女性患者3,628名、RR 1.04、95%CI 0.80~1.35)のいずれとも解釈できなかった。 EBRTにより、中リスクまたは高リスクのサブグループどちらにおいても生存アウトカムは改善されなかったが、高リスクのデータは限られており、高リスク女性に対するEBRTの利益を否定はできなかった。1件の試験(PORTEC-2)は中~高リスクグループを対象にEBRTをVBTと比較し、VBTはEBRTに比べて局所再発率について有意差はなかったが腟コントロールを確実なものとするのに有効であったと報告した(5.1%対2.1%;HR 2.08、95%CI 0.71~6.09、P = 0.17)。低リスク(IA/Bおよびグレード1/2)サブグループでは、EBRTにより子宮内膜癌関連死(治療関連死を含め)リスクが上昇した(2試験、女性患者517名、RR 2.64、95%CI 1.05~6.66)が、総生存に関するデータはなかった。低リスクサブグループでのエビデンスの質は低いと判断した。 EBRTは、EBRTなしに比べて、重度の急性毒性(2試験、女性患者1,328名、RR 4.68、95%CI 1.35~16.16)の有意な増加、重度の遅発性毒性(6試験、女性患者3,501名、RR 2.58、95%CI 1.61~4.11)の増加、そしてランダム化後10年以上経過した時点の生活の質スコアおよび膀胱直腸機能の有意な低下に関連していた(1試験、女性患者351名)。 低リスク病変を持つ女性患者を対象にVBTを追加治療なしと比較した1件の試験では、追加治療なしの群に比べて有意ではないがVBT群に局所再発の減少(RR 0.39、95%CI 0.14~1.09)が報告された。その試験において生存アウトカムにおける有意差はなかった。

訳注: 

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