関節リウマチの管理で電気刺激療法を使用することを裏付けるエビデンスは得られていない。

電気刺激療法(ES)は関節リウマチ(RA)の管理で利用される介入法の1つである。具体的に、ESは筋肉の働き、筋力の維持・増強や日常生活(ADL)でのさまざまな機能的活動に必要な持久力を改善するのに用いられる。筋肉の働きに対するESの効果は、筋廃用性萎縮や関節痛などさまざまな要因で作業時に自発的には活性化されていない運動単位を動員することで得られる。

RAでのESの使用に関して実施されたランダム化比較試験(RCT)や比較対照臨床研究(CCT)、症例対照およびコホート研究のレビューから、特定されたRCTは2件のみであり、このうち選択基準を満たしたのは1件のみであった。手に影響が認められるRA患者15名と対象としたこの1件のRCTの結果から、すべてのアウトカム指標(握力、ピンチ力、筋機能および持久力)について正常の手の第一背側骨間筋から得られる疲労運動単位に基づいたパターン化したESの使用を支持する有意な結果が示された。一定の周波数10Hzでの刺激またはパターン化した周波数刺激のいずれによる電気刺激療法では、2つのアウトカム指標(ピンチ力や筋の持久力)について、治療を行わない対照群と比較した時、有意な有効性が示された。しかし、これらの結論には、ESの適用の特性に関する報告の質や試験の実施方法の質が乏しいことから制限が認められる。このためレビューアは、現時点ではRAの管理にESを含めることについて明確なエビデンスはないものと結論づけた。

著者の結論: 

ESは手の筋萎縮が認められるRA患者の握力や疲れ抵抗に対して臨床的に有用な効果があることが示された。しかし、対象試験における試験方法の品質が低いことから、これらの結論には制限がある。そのため、RAの管理でのESの有用性を裏付けるエビデンスを更に得るためには、より優れた設計の研究が必要である。

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背景: 

電気刺激療法は、筋肉の働きを増強する目的で関節リウマチ(RA)の管理に提案されるリハビリテーション介入法の複数あるうちの一つの方法である。

目的: 

RAリハビリ受診者の筋力および機能改善に関する電気刺激療法の有効性を評価する。

検索戦略: 

MEDLINE、Embase、HealthSTAR、Sports Discus、CINAHL、Cochrane Controlled Trials Register、PEDroデータベース、Cochrane musculoskeletal groupの専門レジストリ、Cochrane field of physicalおよび関連療法領域について2002年1月まで、コクランのために設計した高精度なRCT検索方式に従って検索した。文献検索については、参照文献一覧をハンドサーチで補足的に実施した。更なる文献については、関節リウマチ領域の重要な専門家に連絡を取った。

選択基準: 

事前のプロトコルに従って、RA患者と対象としてESをプラセボまたは他の積極的介入法を比較するランダム化比較試験(RCT)および比較対照臨床研究(CCT)、症例対照および コホート研究のすべてを選択した。言語の制限は設けなかった。

データ収集と分析: 

レビューア2名がそれぞれ事前に設定した選択基準に基づき対象となる研究について判定が行われた。同じレビューア2名がそれぞれデータを抽出し、また3人目のレビューアが事前に開発した書式を用いて確認した。同じレビューア2名が、信頼性の高い尺度を用いて、RCTおよびCCTの試験方法の品質についてそれぞれに評価した。Petoオッズ比を用いてデータ解析を実施した。

主な結果: 

文献で特定された重要な2件の研究のうち、1件のRCTのみが選択基準を満たした。このRCTでは、RAおよび続発性の利き手第一背側骨間筋の廃用性萎縮が認められる患者15名を対象とした、手の機能全般と特に第一背側骨間筋の動作に関する2つの電気刺激療法(ES)の試験計画への影響を比較した。その結果、第一背側骨間筋の筋力および疲れ抵抗について、治療を行わない対照群と比較したときESでは有意な有効性が認められたことが示された。一定の10 Hz刺激周波数よりも、正常の手の第一背側骨間筋から得られる疲労運動単位に基づいたパターン化した電気刺激を用いた時に良好な結果が得られた。ESの適用による副作用は報告されていない。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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