鎌状赤血球症の小児における肺炎球菌感染症予防のための定期的な抗菌薬の投与

レビューの論点

鎌状赤血球症(SCD)の小児における肺炎球菌感染症の予防のための抗菌薬の予防的投与の効果に関するエビデンスを検討した。本レビューは、以前に発表されたコクランレビューの更新版である。

背景

SCDの人は、特に呼吸器系や血液系の感染症にかかりやすいと言われている。これらの感染症は多くの場合、肺炎球菌として知られる細菌(バクテリア)によって引き起こされ、多くの種類の深刻な病気を引き起こす可能性がある。SCDの人は、脾臓(血液をろ過し、免疫系を正常に機能させるために必要な体内器官)が正常に機能していないことや、SCDによって損傷を受けた組織や骨が細菌を保有していることから、影響を受けていない方に比べて感染症にかかりやすくなる。したがって、感染予防は、SCD患者の健康状態を改善し、死亡リスクを低減するための主要な手段の1つである。感染のリスクが最も高いのは3歳以下の小児であるが、肺炎球菌による病気を予防するための特別なワクチンの使用は、このような若い世代に対しては限定的である。そのため、感染を防ぐためには、これらの特殊なワクチンに加えて、通常の抗菌薬が必要となる。年齢とともに感染症のリスクが減少するため、予防的な抗菌薬の投与を中止できる時期が来るかもしれない。レビューの目的は、SCDの小児における肺炎球菌に対する抗菌薬の予防効果を明らかにすることであった。

検索日

エビデンスは2021年1月25日までのものである。

研究の特徴

今回のコクラン・レビューでは、800人以上の小児を対象とした3件の臨床試験を調査し、エビデンスを収集した。

主な結果とエビデンスの質

3件の臨床試験すべてにおいて、ペニシリンを予防的に投与されたSCDの小児の肺炎球菌感染率の低下が認められた。このうち2件の試験では、治療が有効であるかどうかを調べた。3件目の試験では、初期の試験に続いて、治療をやめても命に別状がない時期を調べた。薬剤の副作用はまれで軽微なものであった。しかし、小児が治療予定を守ることができない、抗菌薬の耐性ができてしまうなどの問題があった。主要な評価項目、副次的な評価項目(最終結果)ともに、エビデンスの質は低いと判断された。

ペニシリンを予防的に投与することで、5歳以下のSCDの小児の肺炎球菌感染症の発生率を減少させることができると結論づけた。年長児の感染リスクは低く、継続投与試験では、5歳でペニシリンの定期投与を中止しても、リスクの有意な増加は認められなかった。治療に抵抗性のある細菌がどのくらいの頻度で発生し、それが臨床的にどの程度重要なのかについては、さらなる研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳[2021.10.21] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003427.pub5》

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