うつ病に対する葉酸

本システマティックレビューでは、うつ病性障害の人に葉酸を投与し、うつ病症状を低下させるかについて調べることを目的とした。合計247例を対象とした3件のランダム化試験を同定した。3件すべての試験で葉酸の忍容性は良好であった。これらのうち2件の試験では葉酸を他の抗うつ薬療法に上乗せし、葉酸の有益性を示すエビデンスは限定的であった。3件目の試験では、葉酸と抗うつ薬のタラゾドンを比較したところ、差はみられなかった。したがって、葉酸を他の抗うつ薬へ上乗せすることは有益である可能性が限定的なエビデンスによって示されたが、患者や臨床医が有益であると確信するには、より大規模な試験が必要である。

著者の結論: 

入手可能なエビデンスは限定的であるが、葉酸には他のうつ病治療への上乗せとしての役割が期待できることを示唆している。これは、葉酸値が正常な人と葉酸欠乏症の人の両方にあてはまることなのか、現時点では不明である。

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背景: 

うつ病の治療には有効な介入が多くある。これらの治療の有効性は、葉酸などの補助療法を活用することでさらに高まる可能性がある。

目的: 

1.うつ病治療における葉酸の有効性を評価すること 2.葉酸による治療の有害作用と受容性を評価すること

検索戦略: 

Cochrane CENTRAL Register of Controlled Trials(CENTRAL)、およびCochrane Collaboration Depression, Anxiety and Neurosis Controlled Trials Registers(CCDANCTR-StudiesとCCDANCTR-References - 2005年5月12日)を検索した。関連性のある論文や感情障害に関する主な書籍の文献リストもチェックした。未発表の情報について、この分野の専門家や製薬会社に連絡した。

選択基準: 

明示的な基準に基づいてうつ病性障害と診断された患者を対象に、葉酸または5' -メチルテトラヒドロ葉酸による治療と、別の治療法(抗うつ薬)またはプラセボを比較したあらゆるランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが原本からそれぞれにデータを抽出した。統計解析はReview Manager バージョン 4.1を用いて実施した。

主な結果: 

247例を対象とした3件の試験を選択した。151例を対象とした2件の研究では、他の治療への葉酸の上乗せを評価し、上乗せによってハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)のスコアが平均でさらに2.65点低下した(95% 信頼区間 0.38 ~ 4.93)。葉酸投与群では、10週時点でHDRSスコアが50%未満に低下した患者はより少なかった(相対リスク(RR) 0.47、95% CI 0.24 ~ 0.92)。葉酸投与群で、HDRSスコアが50%低下する患者1名に対する治療必要数は5名であった(95% 信頼区間 4 ~ 33)。96例を対象とした1件の研究では、抗うつ薬のタラゾドンの代わりとして葉酸の使用を評価したが、葉酸による有意な利益は認められなかった。同定した試験では、葉酸の受容性や安全性に関する問題を示すエビデンスはなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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