認知症予防のためのスタチン系

この日本語訳は最新版ではない。英語の最新版をご覧になるにはここをクリックしてください。
著者の結論: 

ランダム化比較試験から、血管疾患リスクのある人に晩年期に投与したスタチン系にはアルツハイマー病や認知症を予防する効果はないことを示す良いエビデンスがある。生物学的には、スタチン系がコレステロールを低下させることにより認知症を予防しうると思われ、また観察研究から得られた初期のエビデンスは非常に有望なものであった。しかし、これらの研究では適応症バイアスがひとつの要因であった可能性があり、その後発表されたRCTからのエビデンスは否定的となっている。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

本レビューは、2001年に最初に発表したコクラン・レビューの最新版である。当時の段階ではアルツハイマー病(AD)の予防にスタチン系を推奨するにはエビデンスが不十分であった。本レビューでは、対象とする範囲をすべてのタイプの認知症にまで拡大した。

目的: 

認知症の予防におけるスタチン系の効果を評価する。

検索方法: 

2007年10月10日に、用語statin*(スタチン)、lovastatin*(ロバスタチン)、pravastatin*(プラバスタチン)、simvastatin*(シンバスタチン)、fluvastatin*(フルバスタチン)、atorvastatin*(アトルバスタチン)、rosuvastatin*(ロスバスタチン)を用いて、Specialized Register of the Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group、コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHLおよびLILACSを検索した。CDCIG Registerには、多数の試験データベースからの記録に加え、多数の保健医療データベース、SIGLE、LILACSが含まれ、定期的に更新されている。

選択基準: 

ADおよび認知症のリスクのある人を対象に、スタチン系に関する二重盲検ランダムプラセボ比較試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独自にデータを抽出し、評価した。議論の後に合意に達した。有害作用について言及した。

主な結果: 

参加者26,340例を対象とした2件の試験、HPS 2002およびPROSPER 2002を同定した。2件の研究全体の年齢範囲は40~82歳であり、PROSPER 2002は年齢70~82歳の患者5,804例を対象としており、HPSは研究登録時に70歳以上であった5,806例を含む患者20,536例を対象としていた。HPS 2002では、研究登録時の平均総コレステロールは5.9 mmol/L、LDL-コレステロールは3.4mmol/Lであり、シンバスタチン治療患者ではプラセボと比較してLDL-コレステロールが平均1.0mmol/L低下した。PROSPER 2002では、研究登録時の平均総コレステロールは5.7mmol/L、LDL-コレステロールは3.8mmol/Lであり、プラバスタチン治療患者ではプラセボと比較してLDL-コレステロールが平均1.02mmol/L低下した。PROSPERの平均追跡期間は3.2年、HPS 2002では5年であった。認知については、異なる時点で異なる尺度で測定されていたためメタアナリシスに統合することはできなかった。HPS 2002では、認知症の罹患率はなく(シンバスタチン群31例、プラセボ群31例)、最終追跡時のmodified Telephone Interview for Cognitive Statusによる成績にもはなかった(シンバスタチン群では23.7%に認知障害があったのに対しプラセボ群では24.2%であった)。研究登録時の年齢や脳血管障害の既往歴に関連した認知に群間でを認めなかった。PROSPER 2002では、両治療群の認知機能は同程度の進行度で低下しており、letter digit code、picture word learning test(絵画語彙学習テスト)、StroopおよびMini Mental State Examinationによる成績については、プラバスタチン群とプラセボ群との間で有意はなかった。スタチン系が認知に不利益となることを示すエビデンスはなかった。

訳注: 

監  訳: 大神 英一,2009.9.15

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

Share/Save