妊娠時鉄欠乏性貧血の治療

著者の結論: 

妊娠時鉄欠乏症貧血の罹病率の高さおよびそれに伴う疾患の負担の大きさにも係わらず、貧血の女性における鉄の投与による母体および新生児への臨床的な効果を評価した質の良い試験が不足している。鉄の連日経口投与により血液学的指標は改善されるが、胃腸関連有害作用が頻発する。鉄の非経口投与(筋肉内および静脈内投与)では、鉄の経口投与と比較して血液学的反応が高まるが、重要有害作用(静脈内投与では静脈血栓症およびアレルギー反応、ならびに筋肉内投与では重大な疼痛、変色およびアレルギー反応)が発現するおそれがある。臨床アウトカム(有害作用を含む)および貧血の重症度ごとの治療効果を評価した質の高い大規模試験が必要である。

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背景: 

鉄欠乏症は、世界において妊娠時の貧血の最も一般的な原因であり、軽度、中等度または重度の場合がある。重度の貧血は、母児に非常に重篤な影響を与えるおそれがあるが、軽度または中等度の貧血の治療が有害性を上回る利益をもたらすかについては議論がある。

目的: 

鉄欠乏症(ヘモグロビンが11 g/dL未満または同等のパラメーターと定義)を原因とする妊娠時の貧血に対する異なる治療法による母体および新生児の罹病率および死亡率への影響を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2011年6月7日)、CENTRAL(2011年第5号)、PubMed(1966年~2011年6月)、International Clinical Trials Registry Platform(ICTRP)(2011年5月2日)、Health Technology Assessment Program(HTA)(2011年5月2日)およびLATINREC(Colombia)(2011年5月2日)を検索した。

選択基準: 

鉄欠乏症を原因とする妊娠時の貧血に対する治療法を比較したランダム化比較試験

データ収集と分析: 

女性3,198例に関する23件の試験を同定した。これらの試験バイアスのリスクを評価した。そのほかに同定された3件の研究が現在分類中である。

主な結果: 

多くの試験は低所得の国におけるもので、それらの試験は概ね規模が小さく、多くは方法論的に低レベルであった。試験は、幅広い様々な薬剤、用量および投与経路に関するもので、データの統合は困難であった。妊娠時の鉄の経口投与では、貧血の罹患率が低下し(リスク比 0.38、95%信頼区間 0.26~0.55、1試験、女性125例)、プラセボと比較して血液学的指標が良好であった(2試験)。貧血の重症度ごとの治療効果を評価することはできなかった。用量と報告された有害作用に傾向性が認められた。ほとんどの試験では、臨床的に関連性のあるアウトカムまたは有害作用は報告されていなかった。筋肉内投与および静脈内投与は経口投与より、女性の血液学的指標が良好であったが、臨床アウトカムは評価されておらず、静脈血栓症や重度のアレルギー反応などの有害作用に関するデータが不十分であった。鉄サプリメントの低用量連日投与は、高用量と比較して胃腸関連の副作用が少なく、妊娠時の貧血の治療に有効である可能性がある。

訳注: 

監  訳: 江藤 宏美,2012.2.7

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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