小児における滲出性中耳炎に伴う聴力損失に対するグロメット(換気チューブ)

著者の結論: 

滲出性中耳炎の小児において、グロメットの聴力(標準的な検査により測定)に対する効果は小さく、6~7カ月後には消失し、非外科的治療群の小児においてもこの時点までに自然消散が聴力の改善につながる。他の小児アウトカムに対する影響は認められなかったが、これらに関するデータは少なかった。確立された言語、学習、発達に問題のある小児を対象にした研究は行われていないため、このような小児の治療に関して結論を導くことはできない。

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背景: 

滲出性中耳炎(「膠耳」)は小児期によくみられ、グロメット(換気チューブ)を用いた外科的治療が広く行われているが、それには議論の余地がある。

目的: 

滲出性中耳炎の小児を対象として、グロメット挿入の有効性を、鼓膜切開または非外科的治療と比較・評価する。

検索戦略: 

発表済みおよび未発表の試験を求めて、Cochrane ENT Disorders Group Trials Register、他の電子データベース、追加情報源を検索した(最終検索日:2010年3月22日)。

選択基準: 

グルメットの効果を評価しているランダム化比較試験(RCT)。検討したアウトカムは聴力レベル、中耳滲出期間、言語発達、認知発達、行動、有害作用であった。

データ収集と分析: 

研究からのデータを2人のレビューアが抽出し、他のレビューアがチェックした。

主な結果: 

10件の試験(1728例の参加者)を選択した。一部の試験は小児をランダム化し(グロメット挿入と非グロメット挿入の比較)、別の試験は耳をランダム化した(グロメット1耳のみ)。小児における滲出性中耳炎の重症度は試験間で様々であった。1件のby child研究(MRC:TARGET)のみが特に厳格な聴力検査的登録基準を用いた。グロメットを長期使用した試験は同定されなかった。グロメットは最初6カ月間で主として有用であり、非外科的治療群においてもこの時点までに自然消散が聴力改善に結びついた。小児(N=211)をランダム化した1件の質の高い試験のみが、3カ月後の結果を報告した。平均聴力レベルはグロメット群においてコントロール群と比して12 dB(95%CI 10~14 dB)良好であった。3件の質の高い試験のメタアナリシス(N=523)は、6~9カ月後4 dB(95%CI 2~6 dB)良好であることを示した。12カ月および18カ月フォローアップ後、平均聴力レベルに差は認められなかった。耳をランダム化した3件の試験(N=230耳)からのデータは、小児をランダム化した試験とほぼ同じ効果を示した。4~6カ月後、平均聴力レベルはグロメット耳で10 dB良好であり(95%CI 5~16 dB)、7~12カ月後で6 dB(95%CI 2~15 dB)、18~24カ月後で5 dB(95%CI 3~8 dB)良好であった。言語発達に対する影響、または行動、認知、QOLアウトカムに対する影響は認められなかった。鼓膜硬化はグロメットが挿入された耳の約3分の1に認められた。耳漏は乳児では高い頻度でみられたが、より年長児(3~7歳)では2年間のフォローアップ期間中にグロメット耳の2%未満に起こった。

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