多発性硬化症患者に対する抗痙縮薬の効果

多発性硬化症(MS)は、若年成人および中年成人が発症する神経系の慢性疾患である。痙縮は、MSを患う人によくみられる症状であるが、中枢神経系の損傷によって生じる随意運動の障害である。主な症状は手足の受動的な動きに抵抗を生じることであるが、痙縮に伴って生じる痛みや痙攣、機能の消失など他の特徴が人の生活の質に直接的影響を及ぼす。抗痙縮薬が多数市販されているが、試験のレビューからは、抗痙縮薬の有効性を比較できる十分なエビデンスは得られなかった。今後もさらなる研究が必要である。

著者の結論: 

多発性硬化症患者に対する抗痙縮薬の絶対的有効性および相対的有効性、ならびに忍容性に関する正式な報告は少なく、処方の指針とするための推奨は不可能である。上位運動ニューロン障害に特有の症状に対する治療の理論的根拠について、理解を深める必要があり、感度の高いバリデーション済みの痙縮評価指標の開発が求められる。

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背景: 

痙縮は、多発性硬化症(MS)患者によくみられる問題であるが、疼痛や痙攣、機能喪失を生じ看護ケアが難しい。痙縮にはさまざまな経口薬や非経口薬が市販されている。

目的: 

MS患者を対象に、抗痙縮薬の絶対的有効性および相対的有効性、ならびに忍容性を評価する。

検索方法: 

Cochrane MS Groupの臨床試験登録(2003年6月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクランライブラリ2003年第2号)、MEDLINE (1966年1月~2003年6月)、EMBASE (1988年1月~2003年6月)、関連論文の文献目録、私信、関連雑誌のマニュアル検索および製薬企業からの情報を検索した。

選択基準: 

試験期間が7日間以上の二重盲検ランダム化比較試験(プラセボ対照または比較試験)とした。

データ収集と分析: 

レビューア2名がそれぞれデータを抽出し、試験結果を要約した。欠測データは、研究責任者に連絡を取って収集した。レビュー対象の試験にアウトカム指標の不適切性および方法論的な問題が認められたことから、メタアナリシスは実施しなかった。

主な結果: 

プラセボ対照試験26試験(バクロフェン、ダントロレン、チザニジン、ボツリヌス毒素、ビガバトリン、プラゼパム、スレオニン およびカンナビノイドを使用)および比較試験13試験が選択基準に合致したため、本レビューの対象とした。このうち15試験のみが筋緊張評価指標として Ashworthスケールを用いており、試験薬の比較において統計的な有意差が認められたのは、プラセボ対照試験8試験では3試験のみであったのに対して、比較試験7試験ではひとつもなかった。痙攣、他の症状および全般的な印象については、バリデーションされていない評価指標による評価のみであり、機能評価については結論が得られていなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD001332

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