アルツハイマー病による認知症に対するドネペジル

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著者の結論: 

ドネペジルで12、24または52週間にわたって治療したアルツハイマー病による軽度、中等度または重度の認知症の人は、認知機能、日常生活活動および行動に対して有益性を経験していた。試験担当臨床家は、治療した患者の全般的臨床状態をより肯定的に評定しており、全般的疾患重症度の指標には悪化が少ないと評価していた。医療資源の総コストを評価するとき、ドネペジルの使用はプラセボに比べ高くも安くもないことを示すエビデンスが幾ばくか存在する。用量10mg/日による利益は、用量5mg/日による利益をわずかに上回っていた。ドネペジル5mg/日は10mg/日に比べ忍容性が良好であることと、コストが低いことを考慮に入れると、5mg/日がより良い選択肢であるかもしれないと考えらた。臨床研究から有効性のエビデンスが示されているにもかかわらず、ドネペジルが有効であるかどうかについての議論が続けられているが、これは、治療効果が小さく、診療では必ずしも明瞭な治療効果が現れないためである。

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背景: 

高齢者の認知症の原因として最も多いのが、アルツハイマー病である。アルツハイマー病の治療目的のひとつは、関連酵素を阻害することにより神経化学伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑制することにある。アセチルコリンの分解は、コリンエステラーゼ阻害薬とよばれる薬剤群によって抑制できる。

目的: 

このレビューの目的は、アルツハイマー病による認知症の患者の健康状態をドネペジルが改善するかどうかの評価である。

検索方法: 

「ドネペジル」、「E2020」および「アリセプト」を検索用語に用いて、2005年6月12日にCochrane Dementia and Cognitive Improvement Groupの Specialized Registerを検索した。このRegisterには、あらゆる主要医療データベースおよび多数の進行中臨床試験のデータベースからの最新の記録が掲載されている。Donepezil Study Groupのメンバーおよびエーザイ社に問い合わせた。

選択基準: 

アルツハイマー病による軽度、中等度または重度の認知症患者を対象にドネペジルによる治療とプラセボを比較したあらゆる非交絡化(unconfounded)二重盲検ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

1名のレビューア(JSB)がデータを抽出し、適切かつ可能な場合にデータを統合し、統合した治療効果、または治療のリスクおよび利益を推定した。

主な結果: 

5272名の参加者を対象とした23件の試験を組み入れた。大半の試験が、参加した患者を対象に6カ月以下の試験期間で行われていた。利用可能なアウトカムデータは、認知機能、日常生活活動、行動、全般的臨床状態および医療資源コストの分野に及んでいる。認知機能については、ADAS-Cog尺度でプラセボと比較して、24週時にドネペジル5mg/日および10mg/日のいずれでも統計的に有意な改善がみられ(-2.01ポイントMD、95%CI-2.69~-1.34、p<0.00001;-2.80ポイントMD、95%CI-3.74~-2.10、p<0.00001)、52週時にはドネペジル10mg/日でプラセボに比べ有意な改善がみられた(1.84 MMSEポイント、95%CI 0.53~3.15、p=0.006)。ドネペジル5mg/日および10mg/日で治療した場合に、全般的臨床状態(臨床家により評価された)については、改善を示したまたは変化がなかった患者の数で24週時にプラセボと比較して、若干の改善がみられた(OR 2.18、95%CI 1.53~3.11、p≦0.0001;OR 2.38、95%CI 1.78~3.19、p<0.00001)。日常生活活動および行動の指標にも治療の利益がみられたが、QOLスコアには利益が認められなかった。ドネペジル10mg/日群ではプラセボ群に比べ、治療終了前に試験を中止した患者が有意に多く(5mg/日群では見られなかった)、このために10mg/日で観察された有益な変化は若干過大評価されている可能性がある。用量10mg/日による利益は5mg/日による利益をわずかに上回っていた。2件の研究は、医療資源の使用とこれに伴うコストについて結果を提示していた。各項目、各項目のコスト、総コスト、および非公式の介護人コストを含めた総コストのいずれについても、治療とプラセボとの間に有意差はなかった。さまざまな有害作用が記録されており、10mg/日群ではプラセボ群に比べ、吐き気、嘔吐、下痢、筋けいれん、めまい、疲労および食欲不振(治療に関連する有意なリスク)の発現率が高かったが、介入の直接的な結果として試験を中止した患者は非常に少なかった。

訳注: 

監  訳: 2006.6.23

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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