子宮内膜症の痛みに対する治療における低用量経口避妊薬

レビューの論点

経口避妊薬は、一般的に子宮内膜症に関連した痛みを治療するために使用されるが、その効果についてははっきりわかっていない。

背景

子宮内膜症はしばしば認められる女性の疾患だが、子宮内膜(子宮内腔を覆う組織)が卵巣など子宮以外の場所にみられるものである。子宮内膜症は、月経痛、性交痛、骨盤痛や不妊症に悩む女性で見つかることが多い。低用量経口避妊薬やGnRHアナログ(ゴセレリン酢酸塩など)などのホルモン治療は、子宮内膜症に関連した痛みの症状を緩和するために用いられる。しかし、ホルモン治療では、副作用のために使用できなかったり治療期間が制限されたりすることが少なくない。

研究の特性

コクランの著者らは、2017年10月19日までの臨床研究を検索した。612人の女性を含む5つの試験が包含規準を満たしていた。それらの研究は、エジプト、アメリカ、日本、イタリアで実施されたものである。

主要な結果

含まれた研究のうち、本レビューで検討できるデータ形式を提供しているのは3つだけであった。

プラセボと経口避妊薬の比較

プラセボ(治療薬に似せた偽薬)と経口避妊薬の比較は、354人の女性を含む2つの研究で行われていた。エビデンスは、バイアスのリスクが高いものであった。経口避妊薬は、治療終了時に口頭で行われた自己申告式の判定(女性が痛みの程度をたとえば「痛みなし」「わずかな痛み」「中等度の痛み」「激しい痛み」や「耐え難い痛み」と評価する方法)で月経痛を改善させたが、これはエビデンスの質は非常に低度である。また、治療終了時に行われた視覚的評価尺度(女性が自分の痛みの程度を線上に示す方法)を用いた自己申告式の月経痛の評価で、経口避妊薬がプラセボと比較して改善させたというエビデンスの質が低度の結果も得られた。プラセボを投与された女性と比較して、経口避妊薬を投与された群で治療終了時に治療開始に比べて月経痛の減少があったことが示されたが、エビデンスの質は非常に低度であった。

経口避妊薬とその他の治療との比較

他の治療法(ゴセレリン酢酸塩)と経口避妊薬を比較した試験が1つあり、50人の女性が対象であった。

この研究はバイアスのリスクが高かった。治療終了時には、ゴセレリン酢酸塩投与群の女性は月経がなく、したがって両群の比較ができなかった。

治療が終了して6か月後に行った、視覚的評価尺度または口頭の評価尺度を使用した自己申告式の月経困難症について、経口避妊薬で治療された女性とゴセレリン酢酸塩で治療された女性の間に明確な違いがないことが示されたが、エビデンスの質は非常に低度であった。治療終了後6か月めにおける経口避妊薬とゴセレリン酢酸塩の比較では、痛みが全くないと評価した女性には明確な差は認められなかった。エビデンスの質は、視覚的評価尺度では非常に低度、口頭による評価尺度では低度であった。

エビデンスの質

エビデンスの質は非常に低度であった。エビデンスの質が低く評価された主な理由は、データが結果に大きなばらつきがある小規模の試験1つのみから得られたものであること、研究デザインの詳細が不明であることによる。また、2つの研究では、研究デザイン、データの収集や解析について提案している製薬会社から資金提供を受けていた。これは、われわれが結果に確信が持てないという懸念があることを意味する。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 井上円加 翻訳、[2018.7.1] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD001019》

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