活動性潰瘍性大腸炎の治療に対する経口投与の5-アミノサリチル酸

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潰瘍性大腸炎の治療にはスルファサラジン(SASP)が長年使用されてきました。 SASPはサルファ分子に結合した5-アミノサリチル酸(5-ASA)でできています。 SASPによる治療を受けた患者の3分の1に副作用が起こり、これは本分子のサルファ部分に関連していると考えられています。 SASPに合併する高頻度の副作用は、悪心、消化不良、頭痛、嘔吐、腹痛などです。 5-ASA薬は、SASPに合併する副作用を避けるため開発されました。 総計7,776名の参加者の48件のランダム化試験をこのレビューに選択しました。 経口投与の5-ASAは、プラセボ(偽薬)より有効であることがわかりました。 経口投与の5-ASA薬は活動性潰瘍大腸炎の治療に有効ですが、SASP療法より有効というわけではありませんでした。 5-ASA服薬患者では、SASP服用患者より副作用が少ない可能性があります。 5-ASAによる副作用は、概ね軽いもので、よくみられるのは、消化器症状(鼓腸、腹痛、悪心、下痢など)、頭痛、潰瘍性大腸炎の悪化などです。 男性不妊は5-ASAにはみられずSASPにみられるため、子供をもちたい患者は5-ASAを希望すると考えられます。 5-ASA化合物はSASPより高価なため、コストを重視する場合はSASPを選択すると考えられます。 5-ASA1日1回投与は、5-ASA通常投与(1日2~3回投与)と同程度の有効性および安全性と考えられました。 様々な5-ASA製剤間に有効性および安全性について差はないようでした。 軽度~中等度の活動性潰瘍大腸炎の患者では、1日用量2.4 gが安全で有効な投与法と考えられました。 中等度の病状の患者は、初回用量4.8 g/日により利益を得る可能性がありました。

著者の結論: 

5-ASAはプラセボより優れており、SASPより有効であるということはなかった。 相対的コストを考慮すると、SASPの代わりに経口投与の5-ASAを使用する臨床的有利性はないように思われた。 5-ASA1日1回投与は、5-ASA通常投与と同程度の有効性および安全性と考えられた。 臨床試験の状況では、1日1回投与により遵守が確実になったと考えられなかった。 市中で5-ASA1日1回投与により遵守が改善するかは不明であった。 様々な5-ASA製剤間に有効性および安全性について差があるようではなかった。 軽度~中等度の活動性潰瘍大腸炎の患者では、1日用量2.4 gが安全で有効な導入療法と考えられた。 中等度の病状の患者は、初回用量4.8 g/日により利益を得る可能性がある。

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背景: 

経口投与の5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤は、スルファサラジン(SASP)の治療的利益を維持しながら有害作用を避けることを意図したものであった。 潰瘍性大腸炎の寛解導入に対し、2 g/日以上の5-ASA製剤はプラセボより有効であるが、 SASPよりも有効であることはないという所見が以前に得られた。 本更新レビューには最近の研究を含め、軽度から中等度の活動性潰瘍大腸炎の治療に使用した5-ASA製剤の有効性および安全性を評価した。

目的: 

主要目的は、活動性潰瘍大腸炎の寛解導入に対する、プラセボ、SASP、または他の5-ASA製剤と比べた経口投与の5-ASAの有効性、用量反応性および安全性を評価することであった。 本システマティックレビューの副次目的は、経口投与の5-ASA1日1回投与の有効性および安全性を通常(1日2~3回投与)投与レジメンと比較することであった。

検索戦略: 

MEDLINE、EMBASEおよびコクラン・ライブラリを用いて、関連性のある研究についてのコンピューター文献検索(開始~2012年1月20日)を実施した。 その後追加された研究を同定するため、レビュー論文および学会の抄録も検索した。

選択基準: 

最短で4週間の投与期間の並行デザインのランダム化比較臨床試験の研究の場合は、解析の対象に含めることを許容した。 活動性潰瘍大腸炎の患者の治療に対する経口投与の5-ASAをプラセボ、SASPまたは他の5-ASA製剤と比較している研究を選択の対象として考慮した。 1日1回の5-ASA投与を通常の5-ASA投与(1日2~3回投与)と比べた研究および5-ASA用量範囲設定研究も選択の対象として考慮した。

データ収集と分析: 

注目したアウトカムは、全体的/臨床的寛解導入の失敗、全体的/臨床的改善、内視鏡的寛解、 内視鏡的改善、服薬遵守、有害事象、有害事象による中止、および参加後の中止または除外であった。 試験は5つの比較群に分けられた:5-ASA対プラセボ、5-ASA対SASP、5-ASA1日1回投与対5-ASA通常投与、5-ASA対5-ASA対照薬、および5-ASA用量範囲。 プラセボ‐コントロール試験を投与法によりサブグループに分けた。 SASP‐コントロール試験を5-ASA/SASP質量比によりサブグループに分けた。 1日1回投与対通常投与の研究を製剤別のサブグループに分けた。 5-ASAコントロール試験を、使用頻度の高い他の5-ASA製剤(アサコール、クラバーサル、サロフォーク、ペンタサなど)によるサブグループに分けた。 用量範囲探索研究を5-ASA製剤によるサブグループに分けた。各アウトカムについて相対リスク(RR)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。 ITTデータ解析を行った。

主な結果: 

48件の研究(7,776名)を選択した。選択した研究の大多数のバイアスは、低リスクと評価された。 測定したすべてのアウトカム変数について、5-ASAは有意にプラセボより優れていた。 臨床的寛解導入に失敗した患者は、プラセボ患者の85%に比べて5-ASA患者では72%であった(RR 0.86、95%CI 0.81~0.91)。 5-ASAについて用量反応性の傾向がみられた。5-ASAとSASPに有効性について統計学的に有意な差は認められなかった。 寛解導入に失敗した患者は、SASP患者の58%に比べて5-ASA患者では54%であった(RR 0.90、95%CI 0.77~1.04)。 5-ASAの1日1回投与と通常投与に有効性または遵守について統計学的に有意な差は認められなかった。 臨床的寛解導入に失敗した患者は、通常投与の患者の44%に対し1日1回投与患者では42%であった(RR 0.95、95%CI 0.82~1.10)。 薬物療法レジメンの遵守に失敗した患者は、通常投与患者の6%に対し1日1回投与患者では8%であった(RR 1.36、95%CI 0.64~2.86)。 様々な5-ASA製剤間に有効性について差があるようではなかった。 寛解導入の失敗は、5-ASA対照薬群の患者50%に対し5-ASA群患者では48%であった(RR 0.94、95%CI 0.86~1.03)。 ASCEND(I、II、III、患者1,459名)研究のプール解析では、 中等度活動性潰瘍性大腸炎の治療に使用したアサコール4.8 g/日と2.4 g/日とに臨床的改善について統計学的に有意な差を認めなかった。 臨床的改善に失敗した患者は2.4 g/日群の41%に対し4.8 g/日群の患者では37%であった(RR 0.89、95%CI 0.78~1.01)。 サブグループ解析では、中等度の病状の患者が4.8 g/日より高用量で利益を得ると示された。 1件の研究(患者123名)は、中等度の病状の患者でペンタサ4 g/日を2.25 g/日と比較していた。 臨床的改善に失敗した患者は、2.25 g/日群の57%に対し4 g/日群の患者では25%であった(RR 0.44、95%CI 0.27~0.71)。 MMXメサラミン4.8 g/日を2.4 g/日と比較している2件の研究のプール解析では、有効性について統計学的に有意な差は認められなかった(RR 1.03、95%CI 0.82~1.29)。 5-ASAは全般的に安全で、高頻度の有害事象として鼓腸、腹痛、悪心、下痢、頭痛および潰瘍性大腸炎の悪化などがあった。 5-ASAとプラセボ、5-ASA1日1回投与と通常投与、5-ASAと他の5-ASA製剤、 および5-ASA用量範囲探索研究(高用量対低用量)において有害事象の罹患率について統計学的に有意な差はなかった。 SASPの忍容性は5-ASAより劣っていた。 有害事象が発現した患者は、5-ASAの15%に対しSASPでは29%であった(RR 0.48、95%CI 0.37~0.63)。