成人の関節包外股関節骨折に対する関節置換術と内固定の比較

著者の結論: 

ランダム化試験から得られたエビデンスは、関節包外股関節骨折に対して関節置換術が内固定を上回る何らかの利点があるか否かを判断するには不十分であった。不安定骨折治療のための関節形成術と内固定を比較するために、大規模で適切にデザインされたさらなるランダム化試験が必要である。

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背景: 

関節包外股関節骨折に通常使用される内固定は、特に不安定骨折ではうまくいかない場合がある。関節包内骨折にしばしば使用される関節形成術による股関節の置換(関節置換術)が代替法として用いられている。

目的: 

成人の関節包外股関節骨折治療のための関節置換術と内固定を比較する。

検索戦略: 

Cochrane Bone, Joint and Muscle Trauma Group Specialised Register(2005年12月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ2005年4号)、MEDLINE、EMBASE、UK National Research Register、整形外科関連雑誌の数誌、学会抄録および論文の引用文献リストを検索した。

選択基準: 

関節包外股関節骨折を有する成人に対して関節置換術と内固定インプラントを比較するランダム化試験と準ランダム化試験。

データ収集と分析: 

レビューする2名の著者が別々に試験の質を10の側面から評価し、データを抽出した。治験責任医師からその後追加された情報を要求した。必要に応じて、データの限定的な統合を実施した。

主な結果: 

大転子領域の関節包外股関節部の不安定骨折を有する70歳以上の患者合計148例が組入れられた2件のランダム化比較試験を同定し、レビューの対象とした。両試験とも長期的アウトカムの評価が不適切であるなどの方法論的な限界があった。1件の試験ではセメントを使用する関節形成術をスライディングヒップスクリューと比較していた。この試験からは、手術時間、局所の創傷合併症、機械的合併症、再手術、死亡率、以前は自立していた患者の1年目の自立性喪失に関して、2つの治療方法に有意差はなかった。しかし関節形成術群では輸血が必要となることが多かった。もう1件の試験では、セメントを使用しない関節形成術と近位大腿部ネイルを比較していた。この試験でも、関節形成群では手術中の出血が多く手術時間が長いことに加え、輸血の必要性が高いことが見いだされた。機械的合併症、局所の創傷合併症、再手術、全身性合併症、1年時点の死亡率、長期的機能に関して、2つの介入との間に有意差はなかった。関節形成群で輸血を必要とした患者が有意に多かった事を除き、プールしたアウトカム・データから、関節形成術と内固定との間で統計学的有意差はなかった(相対リスク1.71、95%信頼区間1.05~2.77)。

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