主なメッセージ
- プロスタグランジンや浸透圧拡張器(水分を吸って膨らむことで頸管を広げる棒状のもの)は、妊娠中期の外科的中絶の前に行う子宮頸管の処置として、安全で効果的な方法であると考えられる。
- ミソプロストールと浸透圧 拡張器は、プラセボ(ダミー治療)と浸透圧拡張器と比較して、おそらく子宮頸管をより拡張させ、手術時間が短くて済み、追加拡張の必要性も少ない。
- ラミナリアを一晩使う方法は、当日にダイラパンSを使う方法と比較して、手術時間、手術前の拡張具合、追加拡張の必要性を改善させるかもしれない。
- 今後は、より大規模な研究が必要である。また、妊娠中期の外科的な中絶における子宮頸部の処置として、フォーリーカテーテルを使う方法を検討する必要がある。
なぜこの問題が重要なのか?
妊娠を終了させる方法として、選択肢がある方が望ましい。すなわち、薬による中絶と、外科的な中絶である。外科的な中絶では、子宮頸管を拡張させ、器具を使って子宮内の組織を取り出す手術(子宮内容除去術)を行う。ほとんどの医療者は、妊娠中期の子宮頸部を拡張させるために、手術の前に何らかの処置を行う。子宮頸部の処置によく使われる薬物としては、プロスタグランジン(ミソプロストール)と抗プロゲステロン薬(ミフェプリストン)がある。機械的な方法には、浸透圧拡張器(ラミナリアおよびダイラパンS)がある。妊娠週数などのさまざまな要因に基づいて、薬物または機械的方法、あるいはその両方が使われる。子宮内容物除去術の前に使われる、子宮頸部の処置として最もよい方法が何なのかについて、意見が一致していない。
実施したこと
妊娠中期の外科的な中絶の前に行う、さまざまな子宮頸部の処置の効果を比較する研究を探した。研究結果を比較してまとめ、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
何がわかったか?
3,029人が参加した21件の研究が見つかった。子宮頸部の処置について、同じ組み合わせを比較している研究はほとんどなかった。ミフェプリストンは、ミソプロストールまたは浸透圧拡張器の24~48時間前に内服されていた。例外として、1件の研究では、ラミナリア使用と同時に内服されていた。ミフェプリストンは200mg、ミソプロストールは400〜600μgの用量で使われていた。
プロスタグランジンと浸透圧拡張器の比較
プロスタグランジンは、浸透圧拡張器と比較して、手術時間にはほとんど影響しないかもしれない。一方、おそらく浸透圧拡張器ほどには子宮頸管を拡張できないだろう。
ミフェプリストンとミソプロストールの併用と浸透圧拡張器の比較
ミフェプリストンとミソプロストールの併用は、浸透圧拡張器と比較して、手術時間にほとんど影響しないかもしれない。一方、浸透圧拡張器ほどには子宮頸管の拡張ができず、追加拡張の必要性が増えるかもしれない。ただ、手術を完了できるかどうかには、ほぼ影響しないかもしれない。
ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用とプラセボと浸透圧拡張器の併用の比較
ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用は、プラセボと浸透圧拡張器 の併用と比較しておそらく、手術時間を短くし、子宮頸管をより拡張することができ、追加拡張の必要性を減らすだろう。手術を完了できるかどうかにはほとんど影響を与えないだろう。
ミフェプリストンと浸透圧拡張器の併用とプラセボと浸透圧拡張器の併用の比較
ミフェプリストンと浸透圧拡張器の併用は、プラセボと浸透圧拡張薬の併用と比較して、手術時間を短くするかもしれない。また、子宮頸管をより拡張することができるだろう。ミフェプリストンと浸透圧性拡張器 の併用は、追加拡張の必要性にはほとんど影響しないかもしれない。一方、手術を完了できるかどうかにはおそらくほとんど影響しない。
ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用とミフェプリストンと浸透圧拡張器の併用の比較
ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用は、ミフェプリストンと浸透圧拡張器 の併用と比較して、手術時間、子宮頸管の拡張具合、追加拡張の必要性にほとんど影響しないかもしれない。おそらく、手術を完了できるかどうかにはほとんど差がないだろう。
ミフェプリストン、ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用とミソプロストールと浸透圧拡張器の併用の比較
ミフェプリストン、ミソプロストールと浸透圧性 拡張器の併用は、ミソプロストールと浸透圧 拡張器の併用と比較して、手術時間、子宮頸管の拡張具合、追加拡張の必要性にほとんど影響しないかもしれない。手術を完了できるかどうかについては報告されていない。
ミソプロストールと浸透圧拡張器の併用とミソプロストール単独の比較
ミソプロストールと浸透圧性拡張器 の併用は、ミソプロストール単独と比較して、おそらく手術時間が長くなる(手術時間に浸透圧性拡張器を挿入する時間が含まれる場合)。また、子宮頸管をより拡張させ、追加拡張の必要性を減らすだろう。手術を完了できるかどうかについてはほとんど影響しない。
ラミナリアと合成浸透圧拡張器(ダイラパンS)の比較
ラミナリアが合成浸透圧拡張器と比較して、手術時間に影響するかどうかは分かっていない。一方、子宮頸管の拡張具合はおそらくほとんど差がないだろう。また、手術を完了できる可能性が下がるかもしれない。
当日にダイラパンSを使う方法とラミナリアを一晩使う方法の比較
当日にダイラパン を使う方法は、ラミナリアを一晩使う方法と比較して、手術時間が長くなり、子宮頸管の拡張具合が少なく、追加拡張の必要性が増えるかもしれない。手術を完了できるかどうかについては、ほとんど差がないかもしれない。
エビデンスの限界
効果の大きさや方向性に違いがあること、分析の対象となったデータを提供した人の数が少ないことなどから、エビデンスに対する信頼性は中程度からほとんどなしである。エビデンスの信頼性を高めるためには、もっと研究が必要である。
本レビューの更新状況
エビデンスは2021年12月20年現在のものである。
《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳[2025.06.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007310.pub3》