早期に発症した新生児敗血症に対する抗生物質の投与法

レビューの論点

新生児(出生から生後72時間まで)で、早期に発症した敗血症(と試験実施者が定義したもの)に対するさまざまな抗生物質レジメン(投与法)について、利用可能なエビデンスをレビューした。

背景

新生児の敗血症は、感染症に対する体の反応によって引き起こされる、重篤で死に至る可能性のある疾患である。新生児敗血症は、世界の新生児死亡原因の第3位に挙げられる新生児の敗血症による負荷は大きいにもかかわらず、診断と治療における質の高いエビデンスは乏しい。本コクラン・レビューは2004年に初版が発表された。新生児敗血症に対する最も適切な抗生物質政策を特定するためには、十分に実施された最新のレビューに基づいてこれらの政策を決定する必要がある。新生児敗血症の臨床上の重要性を考えると、早期発症の新生児敗血症に対するさまざまな抗生物質レジメン(投与法)の効果を評価するこのようなレビューが必要である。

研究の特性

本エビデンスは2020年8月現在のものである。865名の参加者を対象とした5件の試験を対象とした。対象となった試験では、5種類の抗生物質レジメン(投与法)が比較された。

主な結果

アンピシリン+ゲンタマイシンとベンジルペニシリン+ゲンタマイシンを比較した試験が1件、ピペラシリン+タゾバクタムとアミカシンを比較した試験が1件、チカルシリン+クラブラン酸とピペラシリン+ゲンタマイシンを比較した試験が1件、ピペラシリンとアンピシリン+アミカシンを比較した試験が1件、セフタジジムとベンジルペニシリン+ゲンタマイシンを比較した試験が1件の計5件を対象とした。

全死因死亡、重篤な有害事象(重篤な合併症)、呼吸補助、循環補助、腎毒性、神経学的発達障害(行動、記憶、学習能力に影響を及ぼす脳の機能障害)、壊死性腸炎(腸の組織が炎症を起こして死に始める)、耳への毒性(聴力への影響など)の評価では、5つの比較対象のいずれにも差がなかった。現在のエビデンスでは、ある抗生物質のレジメン(投与法)が他の抗生物質よりも優れていることを確認することも否定することもできない。

エビデンスの質

結論を裏付けるエビデンスは、非常に質の低いものである。この5つの試験は、バイアスのリスクが高かった(つまり、結果がプラス側に偏っている可能性のある方法で試験が行われていた)。さらに、5件の試験では参加者が少なく、このレビューの結果は不正確なものとなった。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、冨成麻帆 翻訳[2021.06.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CDCD013837.pub2》

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