デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対する抗酸化物質の予防効果

レビューの論点

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者の呼吸障害の悪化を防ぐための抗酸化物質の効果(有益性と有害性)は?

背景

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、幼少期に筋力低下の兆候が見られ、時間の経過とともに悪化していく遺伝性疾患である。呼吸に使われる筋が悪化することで、息切れが起こり、人工呼吸器(呼吸をサポートする機械)が必要になる。筋力の低下や呼吸機能の低下を遅らせるために抗酸化物質による治療が、提案されている。

研究の特徴

2021年3月23日までのエビデンスを検索した。呼吸に影響を与えたDMDの男児を対象とした2つの研究を含めた。いずれの試験も、抗酸化薬であるイデベノンとダミー薬を比較したものである。1件の研究は、10歳から18歳の66人の参加者を対象としていた。この研究の参加者は、コルチコステロイド(DMDに効果があるとされる薬)の投与を受けていなかった。もう一件の研究では、副腎皮質ステロイドを服用しているDMD患者255人を対象としていた。この研究は、有益ではないという理由で早期に中止された。この研究の全結果はまだ公表されていない。

研究の資金源

この研究は、イデベノンのメーカーであるSanthera Pharmaceuticals社がスポンサーとなっている。

主な結果

イデベノンは、努力性肺活量(肺活量の指標)の低下をわずかに抑えることができるが、呼吸機能が悪化している患者のQOL(生活の質)にはほとんど影響しないと思われた。イデベノンは、肺と気道から空気を押し出す能力の低下を少なくする可能性がある(一秒量(最初の1秒間に呼出される努力性肺活量)と最大呼気流量のテストに基づく)。イデベノンはダミー薬に比べて重篤な副作用が少なく、非重篤な副作用にはほとんど影響しない。イデベノンは、筋機能(上肢の筋力)にほとんどまたはまったく影響を与えない場合がある。呼吸器系感染症による入院について調べた研究はなかった。

エビデンスの質

エビデンスの確実性は全体的に低かった。

訳注: 

《実施組織》 堀本佳誉、冨成麻帆 翻訳 [2022.03.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013720》

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