嚢胞性線維症に対する短時間作用型吸入気管支拡張薬

レビューの論点

嚢胞性線維症患者における短時間作用型吸入気管支拡張剤(気道を広げて開き、呼吸をしやすくする治療法)の使用に関するエビデンスを検討した。短時間作用型気管支拡張剤は、すぐに効果が現れ、一般に4~6時間持続する。短時間作用型吸入気管支拡張薬の種類、投与量、デバイス(吸入器、ネブライザー)の種類を問わないものとした。

ネブライザーも吸入器も、薬を届ける器具である。ネブライザーは、液状の薬剤を吸い込みやすい霧状にしたものである。種類はさまざまであるが、使用するには充電池などの電源が必要である。吸入器は、手持ちの手動式装置で薬を短時間に噴射する(エアゾールまたはドライパウダーとして)。最も一般的な吸入器は定量噴霧式吸入器である。吸入器には、スペーサー(吸入器のマウスピースに装着するプラスチック製の空のチューブ)を使用することができる。

吸入気管支拡張剤は、呼吸を助け、肺の粘液を排出しやすくするために、多くの嚢胞性線維症の患者に使用されている。これらの治療が、プラセボ(ダミー)治療や他の種類の短時間作用型吸入気管支拡張剤よりも優れているかどうかを知りたかった。

検索期間

エビデンスは2022年3月28日までのものである。

試験の特徴

レビューには、5歳 から 40 歳 までの嚢胞性線維症患者 191 人 を対象とした 11 件の試験が含まれている試験では、2種類の短時間作用型吸入気管支拡張剤(サルブタモールやアルブテロールなどのβ2作動薬、イプラトロピウム臭化物などのムスカリン拮抗薬)を、薬剤を含まないプラセボ物質、あるいは別の短時間作用型吸入気管支拡張剤と比較し、そのうち3試験ではβ2作動薬 vs ムスカリン拮抗薬 vs プラセボという3群の比較試験が行われた。すべての試験はクロスオーバー試験で、試験に参加したすべての人が異なる時期に両方の治療を受け、治療を受ける順番はランダムであった。試験期間は単回投与から6か月間までであった。8件の試験では短時間作用型吸入β2アゴニストの効果をプラセボに対して、4件の試験では短時間作用型吸入ムスカリン拮抗薬の効果をプラセボに対して、3件の試験では短時間作用型吸入β2アゴニストと短時間作用型吸入ムスカリン拮抗薬の効果を検討した。

主な結果

すべての試験で、短時間作用型吸入気管支拡張薬の肺機能への影響(強制呼気1秒量(FEV1)として測定)が調べられたが、その報告の仕方や時点は異なっていた。

短時間作用型吸入気管支拡張薬のいずれかがプラセボと比較してFEV1に影響を与えるかどうかは不明である。試験規模が小さすぎて、効果があるかないかを示すデータが十分でなかった。

治療による有害事象を報告したのは11試験中6試験のみで、1試験は有害事象なし、5試験は軽度の振戦、口渇、疲労を報告していた。

エビデンスの確実性

全試験におけるエビデンスの確実性は非常に低いものであった。すべての試験で、被験者に1つの治療を施した後、ウォッシュアウト期間(薬が体外に排出されるまでの期間)を置いてもう1つの治療に切り替えるクロスオーバーデザインが採用された。第1治療期開始時と第2治療期開始時の被験者の臨床状態が同じでない可能性がある。また、これらの試験は非常に小規模で、10年以上前に実施されたものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2022.07.11]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013666.pub2》

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