湿疹の治療に副腎皮質ステロイド外用薬を使う際の最良の方法は何か?

要点

- 一般的に、より強力な副腎皮質ステロイド外用薬(皮膚に塗って使用するステロイドのクリーム剤)の方が、より弱い製剤よりも効果的であろう。強力なステロイドクリームを1日1回塗るのでも、1日2回塗るのと同じくらい有効であろう。ステロイドクリームを週に2日連続で使用すれば、おそらく湿疹の再燃を防ぐことができる。

- およそ3分の1の研究で皮膚の菲薄化(皮膚が薄くなること)について調査されていたが、菲薄化の症例は非常に少なかった。そのため使用方法による違いを判断するのは難しかったが、より強力なステロイドクリームを使用した方が皮膚が薄くなる症例が多かった。

- 好ましくない影響について判断するには、長期間にわたる、より質の高い研究が必要である。しかしながら、ステロイドクリームの断続的な使用において、好ましくない影響はおそらく多くないだろう。

湿疹とは何か、またどのように治療されるのか?

湿疹は、炎症を起こし、乾燥し、かゆみを伴う皮膚の斑点が長く続く状態で、よく見られるものである。その重症度はさまざまである。現在のところ根治は不可能であるため、治療では炎症やかゆみなどの症状を抑えることを目指す。治療の第一選択は、保湿剤と炎症を抑える治療(多くはステロイドクリーム)の組合せである。

調べたかったこと

湿疹の治療において、ステロイドクリームはさまざまな方法で使われる。そのため、どのクリームを使えばいいのか、どれくらいの頻度で、どのように使えば一番いいのか、迷うことが多い。ステロイドクリームのさまざまな使用方法について、有効性と、望ましくない影響を引き起こすかどうかについて調べたかった。

本レビューで行ったこと

成人および小児を対象に、ステロイドクリームのさまざまな使用方法について検討した研究から得られたエビデンスを要約した。医師・研究者または参加者が評価した湿疹の重症度の変化、および皮膚の菲薄化(皮膚があざになったり裂けやすくなったりする状態)などの好ましくない影響について、ステロイドクリームによる治療方法を評価した。その結果を比較、要約し、研究方法や規模などの要素からエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

ほとんどの研究は高所得国で実施され、大体は病院で実施され、実施期間は短期間(1~6週間)であった。湿疹の再燃予防を評価した研究の実施期間は比較的長かったが、それでも6ヵ月未満であった。参加者の年齢はさまざまで、43件の研究では小児のみを対象としていた。湿疹の程度は、51件の研究で中等度または重度、16件の研究で軽度から中等度、3件の研究で軽度から重度であった。34件の研究では重症度が報告されていなかった。およそ半数の研究は、ステロイドクリームを製造している企業、あるいは産業界とつながりのある企業から資金提供を受けていた。44件の研究は資金源を報告していなかった。

8,443人の参加者を含む104件の研究を対象とした。

- 強力なステロイドクリームと弱いステロイドクリームの比較(63試験)。 31件の研究(2,018人の参加者)のデータを統合した。より強力なステロイドクリームを使用すると、医療従事者による評価で、明らかな、あるいは著明な改善が得られる可能性がおそらく高くなる。1,000人の患者を治療した場合、弱いステロイドクリームを使用すれば340~390人、中等度のステロイドクリームを使用すれば460~520人、強力なステロイドクリームを使用すれば530~710人が治癒またはほぼ治癒すると考えられる。

- ステロイドクリームの1日2回塗布と1日1回塗布の比較(25試験)。 1,821人を対象とした15件の研究のデータを統合した。強力なステロイドクリームを1日1回塗るのは、1日2回塗るのと比較して、おそらく同じ程度の効果がある。研究では好ましくない影響がきちんと報告されておらず、いくつかの結果については不確かである。22件の研究(2,266人の参加者)が皮膚の菲薄化を報告している。その結果、とても強いステロイドクリームを使用した症例が16例、強いステロイドクリームを使用した症例が6例、中等度のステロイドクリームを使用した症例が2例、弱いステロイドクリームを使用した症例が2例の合計26例が確認された。

- ステロイドクリームを塗布する期間の長短(0試験)

- 再燃予防のための週2回の塗布(週2日連続でステロイドクリームを使用)と塗布なしの比較(9試験)。 7件の研究(1,149人の参加者)のデータを統合した。週2回ステロイドクリームを使用すると、湿疹が再燃する可能性はおそらく減少するだろう。1,000人が週2回再燃防止としてステロイドクリームを使用した場合、使用しなかった場合は576人であるのに対し、約248人が1回以上の再燃を起こすと予想される。7件の再燃予防試験(1,050人)では、皮膚菲薄化の症例は確認されなかった。

- その他の比較。 新しい世代のステロイドクリーム製剤と古い世代のステロイドクリーム製剤、クリームと軟膏、ウェットラップ療法を併用したステロイドクリーム、毎日塗布する場合とあまり塗布しない場合、強さが異なるが同じ成分のステロイドクリーム、塗布する時間帯、ステロイドクリームと局所カルシニューリン阻害剤(プロトピックやエリデルなど、訳者注:エリデルは日本では未承認)を交互に塗布する場合とステロイドクリーム単独で塗布する場合、湿潤した皮膚に塗布する場合と乾燥した皮膚に塗布する場合、保湿剤の前に塗布する場合と後に塗布する場合といった比較についても検討した。 ステロイドクリームの先発医薬品とジェネリック医薬品を比較した研究や、保湿剤とステロイドクリームを塗布する間隔の長さについて比較した研究はなかった。

エビデンスの限界

全体として、湿疹の治療にステロイドクリームを使用することの有効性には中程度の確実性がある。一方、研究規模が小さく、常に最も信頼できる方法が用いられていたわけではないため、好ましくない影響に関する確実性はほとんどない。

本レビューの更新状況

エビデンスは2021年1月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、小林絵里子 翻訳 [2023.09.DD]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013356.pub2》

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