最も禁煙効果が高いニコチン代替療法は何か?

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背景

ニコチン代替療法(NRT)では、経皮パッチ、チューインガム、鼻腔や口腔へのスプレー、吸入器、錠剤やタブレットという形態で脳にニコチンを伝達する薬が処方される。NRTの目的は、通常はタバコから摂取しているニコチンを補充することでタバコを吸いたい衝動を抑えて、禁煙することである。NRTはタバコを止められる可能性を高めることが知られており、禁煙するために利用されている。このレビューでは、禁煙を目的とするNRTの様々な方法について、6ヶ月以上の禁煙効果がある最も良い方法は何かを検討した。

研究の特性

このレビューは、合計41,509人の参加者を含む63件の試験を対象とした。全ての研究は禁煙を希望する人を対象に行われ、そのほとんどが成人を対象としていた。研究の対象となった人は、ほとんどが研究開始時に少なくとも1日15本以上のタバコを吸っていた。少なくとも6ヶ月の経過を観察している研究が収集された。最新の文献検索は2018年 4月に行われた。

主な結果

ニコチンパッチとその他のNRT(ガムや錠剤など)が組み合わせて使用されると15%から36%が禁煙に成功しており、単独のNRTよりも高い成功率であった。ニコチンパッチのニコチン用量が高いほど禁煙に成功しやすい傾向があった(16時間以上25mgを貼付または24時間以上21mgを貼付すると、15mgを16時間以上または14mgを24時間以上貼付した場合より禁煙成功率が高かった)。またニコチンガムにおいてもニコチン用量が2mgに比べ4mgの方が高い成功率であった。禁煙開始後だけでなく禁煙する前日にもNRTを使用する方が、禁煙後のみNRTを使用するよりも効果が高い可能性があるが、そのように結論付けるには更に研究が必要である。しかし、ガムや錠剤や鼻腔へのスプレーなどの他のNRTも、ニコチンパッチと同様の禁煙成功率であった。

また、NRTをどのくらい継続するべきか、NRTは決められたスケジュール通り行うべきか患者の希望時に行うべきか、NRTを無料で提供した場合と有料の場合でどちらが禁煙成功率が高いかについても検討した。しかし、これらの課題に答えるためには、更なる研究が必要である。

安全性に着目した研究はほとんどなかった。安全性について検討している研究においては、NRTによる有害事象があった患者は僅かであった。他のレビューはNRTは安全な投与方法であることを示していた。

エビデンスの質

単独のNRTよりNRTを組み合わせた方が効果が高いこと、高い用量のニコチンガムは低い用量よりも効果が高いこと、異なるタイプのNRT(ガムや錠剤など)の効果に違いは無いこと、といったエビデンスの確実性は高かった。これは、更に研究を重ねても本研究の結論が覆る可能性は低いことを意味している。それは規模の大きい研究が適切に行われているためである。しかしながら、本研究で検討した他の全ての課題については、エビデンスの質は中(Moderate)、低(low)、または、非常に低(very low)であった。これは、更なる研究の実施により本研究の結果が覆る可能性があることを意味している。多くの場合、研究数が多くなく、研究デザインに問題があったり、研究参加者数が少な過ぎるたりすることが原因である。NRTの安全性について検討したところ、NRTの安全性について報告した研究は少なく、エビデンスの質は低(low)、または、非常に低(very low)であった。

訳注: 

《実施組織》星佳芳 翻訳、清原康介 監訳 [2019.04.23] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどにお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013308》