医療機関に通院中のHIV持続感染者の高ウイルス量を検出するベッドサイドの迅速検査

高HIVウイルス量を検出する診断技術を改善することがなぜ重要なのか?

それは、抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV持続感染者(PLHIV)のHIVウイルス量を監視するのに役立つ。高ウイルス量は薬でウイルスを抑えることができていないことを示し、ART治療無効状態である。この状態では重症化や死亡の危険性がある。患者を診察するベッドサイド(point-of care)で素早くHIVウイルス量を検査できるベッドサイドの迅速診断検査は、必要時にARTの早期変更を可能にする。

レビューの目的

医療機関に通院するPLHIVにおいて、高HIVウイルス量診断のためのベッドサイドの迅速検査(POC)の精度を明らかにする。

検討した内容

ウイルス量を検出するための迅速検査の測定結果と中央検査室における検体検査(基準となる検査)の測定結果を比較した。検査を実施した医療機関にかかわらず、ウイルス量を測定するすべての種類のベッドサイドの迅速検査を対象とした。

主な結果

8,659人の参加者を含む20の比較評価を完遂した14件の研究においては、臨床的に推奨する閾値、1000コピー/mL以上で高ウイルス量陽性と診断する分子学的現場検査を比較していた。

レビューの強みと限界

このレビューには、HIV/AIDSケアセンターまたは医療施設から日常で採取されたPLHIVからの検体を用いて行われた十分な研究が含まれているが、参加者全員がARTを受けていたかどうかは不明であった。また、対象となった検査のうち患者の傍らで行われた真のベッドサイドの迅速検査はなかった。対象となった検査の半分(n = 10)は、患者に近い施設内検査室での現場検査を評価し、残りの半分は中央または基準の検査室で評価された現場検査であった(n = 10)。

レビューの結果が適用される対象者

医療機関に通う高ウイルス量が疑われるPLHIV

レビューが示唆していること

理論的には、1000人のPLHIVのうち100人が高ウイルス量だった場合、136人が分子学的現場検査では陽性結果を得る。このうち39人はウイルス量が実際は高くなく(偽陽性)で、ART治療に反応しないと誤って認識され、不必要な検査やさらなる治療につながる可能性がある。また、864人が分子学的現場検査で陰性結果を得るが、このうち3人はウイルス量が実際は高値であり(偽陰性)、ART治療無効であるにもかかわらず見逃されるだろう。

レビューの更新状況

エビデンスは2020年11月23日までのものである。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、星進悦 翻訳 [022.06.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013208.pub2》

Tools
Information