変形性股関節症に対する鍼治療

本レビューの目的

本コクラン・レビューの目的は、鍼治療が変形性股関節症の人の痛みと機能を改善するかを検証するものである。この問いに答えるために関連するすべての研究を集めて分析したところ、413例を対象とした6件の試験を見出した。

要点

変形性股関節症の人、8週間近く

治療は、偽鍼と比較して、痛みまたは機能に恐らくほとんど、または何の変化も起こさなかった。

治療+主治医の通常治療は、主治医の通常治療単独と比較して、痛みおよび機能を改善した可能性がある。

治療とアドバイス+体操または非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti- Inflammatory Drugs:NSAIDs)とを比較して、痛みおよび機能が改善したかは不明確である。

治療+患者への教育と患者教育単独とを比較して、痛みおよび機能が改善したかは不明確である。

このレビューからわかったこと

変形性股関節症は関節の疾患で、股関節は二番目に最も影響を受ける関節である。変形性股関節症を治療する薬剤治療の中には副作用のリスクがある。それゆえ、鍼治療を含む、薬剤治療ではない効果的で安全な治療を評価することは重要である。伝統鍼治療論によると、非常に細い鍼を刺すことによって体の正しい経穴(ツボ)を刺激すると、痛みを軽減し機能を回復する。

臨床試験において、偽鍼は真の鍼治療に対するプラセボを意図する。偽鍼治療は、患者自身は真の鍼治療を受けていると信じているが、鍼を皮膚に貫通しない、または体の正しい場所に鍼をしない、またはその両者である。偽鍼対照の目的は、鍼治療による改善が、鍼治療の特定の生理的効果によるものではなく、患者の鍼治療に対する信用によるものかを決定するためである。しかし、偽鍼に関する議論が起こっている。偽鍼の種類によっては、真の鍼治療と同様の効果が得られる可能性があるとされている。

レビューの主な結果

2018年3月までに発表された関連するすべての試験を検索したところ、413例を対象とした6件の試験を見出した。すべての試験は、年齢平均61~67歳の主に高齢の参加者を対象とし、変形性股関節症である期間の平均は2~8年であった。約3分の2の参加者が女性であった。

対象とした2件の試験は、鍼治療と偽鍼治療とを比較していた。これら2件の偽鍼対照試験は小規模であったが、よくデザインされており、一般的に高い方法論的質であった。偽鍼対照介入は、信用性があると判断されたが、それぞれの偽鍼介入は弱い鍼治療特有の効果のリスクがあると判断された。その理由として、1件の試験は、正しいツボに貫通させずに鍼を当てたものと、もう1件は貫通する鍼を用いて正しいツボではないところに刺入したからである。これら2試験のメタアナリシスは、真の鍼治療と偽鍼とを比較して、痛みの軽減または機能においてほとんど、または全く改善しないという中等度の質のエビデンスであった。真の鍼治療を受けた人は、偽鍼を受けた人と比較して、わずかで有意でない痛みおよび機能の改善のアウトカム(痛みと機能の0~100段階のスコアで2ポイントの改善)があった。研究は少ないサンプル・サイズのため、信頼区間は鍼治療効果において、中等度の利益および全く効果のない可能性の両者であった。生活の質に関するプールされたアウトカムは推定できなかった。

1件の非盲検化試験は、通常の主治医ケアに追加した鍼治療が痛み、機能、身体的な生活の質(精神的な生活の質ではない)の利益と相関するという低い質のエビデンスを呈した。しかし、利益に関するこれらの報告は、追加の鍼治療を受けた試験参加者が、少なくとも部分的に、利益に先験的な期待をしたこと、またはランダム抽出の際に鍼治療を希望したことに起因すると思われる。3件の他の非盲検化試験のエビデンスは不明確である。

治療の副作用の可能性は、鍼の刺入部の軽微なあざ、および出血であり、2件の試験で報告された。4件の試験有害事象について報告していたが、鍼治療に起因する重大な有害事象の報告はなかった。X線で確認した関節の変化を報告した試験はなかった。

本レビューの更新状況

2018年3月18日までに発表された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD013010】

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