早期子宮頸癌に対する神経温存広汎子宮全摘出術

論点
広汎子宮全摘出術は、早期子宮頸癌に対する標準治療のひとつである。広汎子宮全摘出術では、子宮、頚部、膣上部、および頚部・膣上部の周囲組織を切除する。本術式は切除範囲が広範に及ぶため、QOLに影響を与える排尿障害が生じることがある。

本レビューの目的
神経温存広汎子宮全摘出術は、骨盤神経を温存し、膀胱機能障害を防止するために開発された準広汎子宮全摘出術である。しかし、本術式により生存期間が短縮し、再発率が上昇する可能性がある。科学的データベースで、2018年5月までに発表された文献を検索し、患者が標準術式または神経温存術に無作為に割り付けられた試験をレビュー対象とした。

主な結果
神経温存子宮全摘出術と標準子宮全摘術を比較した小規模試験4件を対象とした。いずれの試験にも、全生存期間および術後1カ月間の間欠的自己導尿[患者が定期的に小さいチューブ(カテーテル)を尿道から膀胱へ通し、排尿する処置]率に関するデータはなかった。報告されたデータに一貫性がなかったため、2つの術式のQOLに対する相対効果の評価は不可能であった。神経温存広汎子宮全摘出術を受けた患者は、標準的な子宮全摘出術を受けた患者と比較して、術後の排尿(予め決められたスケジュールに従って排尿するよう指示される膀胱トレーニング法を行う)機能が良好であった。神経温存広汎子宮全摘出術を受けた患者のほうが手術による悪影響を受けやすい、または癌が再発しやすいとのエビデンスはなかった。したがって、エビデンスの確実性は低い、または非常に低い。

結論
神経温存広汎子宮全摘出術は標準的な子宮全摘出術と比較して、膀胱機能不全の発現を減少させる可能性がある。しかし、このエビデンスの確実性は低く、さらに試験を実施すれば、今回の結果をはっきりと示すことができる可能性がある。神経温存広汎子宮全摘出術による延命効果に心配がないかどうかは非常に不確実である。癌再発に関するエビデンスは非常に確実性が低く、癌またはその他の死因による死亡リスクに関する長期データはなかった。本集団の再発リスクは低いため、早期子宮頸癌患者の生存期間に関して神経温存広汎子宮全摘出術の効果を判断するには、多くの患者を対象とした質の高い国際試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)吉田加奈子 翻訳、勝俣範之(日本医科大学小杉病院腫瘍内科)監訳 [2019.4.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012828》

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