呼吸器を使用し、脳出血のリスクがある未熟児の痛みや不快感に対処する薬剤

レビューの論点

痛み止め(鎮痛薬)は、正期産(訳注:37週0日~41週6日)よりも早く生まれて(「早産児」)機械的な呼吸補助を必要とする赤ちゃんの脳出血や死亡を減らし、長期的な発達を改善するか

背景

早産児、特に妊娠28週よりも前に生まれた赤ちゃんは、時に脳出血を起こすことがある。脳の出血が重度でなければ、赤ちゃんは完全に回復するか、のちに問題があっても軽度で済むかもしれない。出血が重篤になると死亡するか、のちにいくつか問題が生じる可能性がある。現在のところ、脳出血を予防したり治療したりする対処方法はない。

実施したこと

早産児の脳出血予防のための鎮痛薬を検討したコクラン・レビューを検索した。各レビューの質を評価し、その結果を要約することによって、各治療薬に関連する現在のエビデンスを一か所に集めた。

わかったこと

コクラン・レビュー7件とコクラン・レビューのプロトコール(計画書)1件を対象とした。2件のレビューには、対象外の範囲の研究が含まれていた。たとえば、妊娠末期に普通に生まれた赤ちゃんや、呼吸器を必要としない赤ちゃんに焦点を当てたものなどである。それ以外の5件では、パラセタモール(3件)、ミダゾラム(3件)、フェノバルビタール(9件)、オピオイド(20件)、イブプロフェン(5件)が検討されていた。

主な結果

• 重度でない脳出血

イブプロフェンについては、プラセボ(活性成分を含まない薬または偽薬)と比較して、脳出血の発生に重要な差がない可能性が高い(19%の減少から21%の増加まで)というエビデンスに中等度の確実性がある。モルヒネとジアモルヒネの比較、他の薬剤とプラセボの比較については、エビデンスに確実性がない。その他の異なる2剤の比較を調査した研究に、この治療結果を検討したものはなかった。

• 重度の脳出血

パラセタモール、フェノバルビタール、オピオイド、イブプロフェンについては、プラセボと比較したエビデンスに確実性がない。同様に、イブプロフェンと比較したパラセタモール、ミダゾラムおよびフェンタニルと比較したモルヒネに関するエビデンスにも確実性がない。ミダゾラムとプラセボ、モルヒネとジアモルヒネを比較した研究に、重度の脳出血を報告したものはなかった。

• 生後28日目の死亡(原因を問わない)

オピオイドについては、プラセボと比較して、重要な差を生じない可能性が高い(20%の減少から55%の増加まで)というエビデンスに中等度の確実性がある。一方、プラセボと比較したフェノバルビタールとイブプロフェンに関するエビデンス、ミダゾラムおよびジアモルヒネと比較したモルヒネに関するエビデンスには確実性がない。パラセタモールとミダゾラムをプラセボと比較した研究、パラセタモールとイブプロフェンを比較した研究、モルヒネとフェンタニルを比較した研究では、生後28日での死亡(原因は問わない)は報告されていない。

• 長期的な発達・発育

赤ちゃんの長期的な発達・発育に関して、生後18~24ヵ月および5~6歳の時点でオピオイドをプラセボと比較したエビデンスには確実性がない。他の研究に、長期的な発達・発育を検討したものはなかった。

コクラン・レビューのプロトコルで、デクスメデトミジン(痛みを管理し、赤ちゃんをリラックスさせる薬)に関するものが1件あった。そのレビューが発表された際には、そのエビデンスも含める予定である。

エビデンスの限界

イブプロフェンでは重症度の低い脳出血について、オピオイドでは(原因を問わず)死亡について、プラセボと比較したエビデンスに中等度の確実性がある。その他の比較や治療結果には確実性がない。そのような研究は、本レビューに利用可能な情報を報告していないか、得られた結果にわずかな確実性しかなかった。いずれの研究も小規模であり、結果に誤差を生じやすい方法を用いていた。

本エビデンスの更新状況

本エビデンスは2022年8月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子 翻訳、ギボンズ京子 監訳[2023.12.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012706》

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