成人患者に対するがん治療関連の悪心・嘔吐の予防および治療のためのオランザピン

背景

オランザピンは、悪心・嘔吐に対する治療薬(制吐薬)として有効であるか、安全に使用できるかについて研究が行われてきた。がん患者は、化学療法や放射線治療の前後および治療中、あるいは緩和ケア(治療が治癒ではなく症状緩和を目標として実施される)期間中に、現在使用可能な薬剤があるにもかかわらず、苦痛を伴う悪心・嘔吐を経験することが多い。一部の患者では、悪心・嘔吐に対する標準的な治療薬を使用しても、化学療法による厄介な悪心・嘔吐が続くことがある。

近年、化学療法による悪心・嘔吐の予防および治療に関する試験がいくつか実施された。

レビューの論点

成人がん患者に対する悪心・嘔吐の予防および治療としてオランザピンを使用する際の利益と不利益について調査を行った。

検索日/検索期間

2017年9月に試験の検索を行った。

試験の特性

最も信頼性のあるエビデンスはランダム化比較試験(RCT)から得られることから、悪心・嘔吐の治療または予防に使用するオランザピン経口薬について検討したRCT 14件、世界各国からの参加者計1,917例を組み入れた。

組み入れた全試験では、オランザピンは他の薬剤、通常は制吐薬(悪心・嘔吐に対する治療薬)と併用されていた。9件のRCTがオランザピンをプラセボ治療効果のない物質)または治療なしと比較していた。残りの試験では、オランザピンと他の制吐薬との比較が行われた。

参加者における抗がん剤治療の有無について

13件のRCTは化学療法中の参加者を対象に実施された。化学療法は、悪心・嘔吐がどの程度起こりやすいか(すなわち、化学療法剤の催吐性リスク)によって分類される。13件中6件のRCTでは、参加者は高度催吐性リスク化学療法(HEC)または中等度催吐性リスク化学療法(MEC)を受けていた。また6件では、参加者はHECのみを受けていた。1件では、参加者がHECまたはMECのどちらを受けていたのかの記述はなかった。

いずれのRCTにも、放射線治療を単独で受けていた参加者はいなかった。1件の試験には、がん治療として化学療法と放射線治療の併用を受けていた参加者がいた。また別の1件では、化学療法も放射線治療も受けていない参加者が含まれていた。

試験の資金提供元

レビューの対象としたRCTに製薬会社から資金提供を受けたという報告はなかった。5件の試験には、がん財団や基金、あるいは大学から資金提供を受けたとの記述があった。9件は資金について公表していなかった。

主な結果

化学療法の実施中に吐き気を催したり、嘔吐することはないと予測される患者の割合は、標準治療とオランザピンの投与を受けた患者では50%であったのに対し、標準治療のみの患者ではわずか25%であった。オランザピンの使用により、過度の眠気が生じる可能性が高い。オランザピン1日10 mgの代わりにオランザピン1日5 mgを使用することにより、悪心・嘔吐に対する効果を減弱させずに眠気が発生するのを抑えられるかどうかは確かではない。他の副作用または重篤な副作用の発症リスクも確かではないことから、その発症の可能性を認識することが重要である。標準治療との併用でオランザピンの投与を受ける患者は、標準治療を単独で受ける患者に比べてQOL(生活の質)が改善される可能性があることが示唆されているが、データ解析を行うことができなかったため、この見解は確実性が非常に低い。患者がオランザピンを使用していない場合と比べて、オランザピンの使用を望んでいるかどうかを示す十分なエビデンスはない。

現在使用されている他の悪心・嘔吐に対する治療薬に対して、オランザピンが同等であるのか、優れているのか、あるいは劣っているのかを示す十分なエビデンスはない。

エビデンスの質

試験から得られたエビデンスの質を、「非常に低い」、「低い」、「中等度」、および「高い」の4段階に等級付けした。「非常に低い質のエビデンス」は、結果の確実性が非常に低いことを示し、「高い質のエビデンス」は、結果に対する確信度が高いことを示す。プラセボまたは治療なしと比較した場合、オランザピンを使用することで悪心・嘔吐が全体的に軽減されるが、過度の眠気が増加するという中等度の質のエビデンスが得られた。患者の好みに対する中等度の質のエビデンス、および有害事象に対する低い質のエビデンスが得られた。その他のエビデンスの質は低いまたは非常に低いものであった。

レビューからわかったこと

オランザピンが悪心・嘔吐に対する有効な治療薬であることはほぼ確かである。最適な用量が5 mgあるいは10 mgであるのか、それとも2.5 mgでも効果が得られるのかは不確実である。本レビューによって確認できた内容は、オランザピンの経口剤に関する情報のみであり、注射剤については確認できなかった。オランザピンの臨床的な使用に際してはさらに研究が必要である。

訳注: 

訳注: 《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)栃木和美 翻訳、後藤悌(国立がん研究センター中央病院呼吸器内科)監訳 [2018.12.11] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012555》

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