統合失調症のための温胆湯

レビューの論点

統合失調症患者の治療に対し、中薬(中医学の薬草療法、Traditional Chinese medicine:TCM)である温胆煎じ薬(Wendan decoction :WDD)は有効であるという臨床試験に基づいたエビデンスはあるか?

背景

統合失調症は重度の精神疾患であり、言語と知覚、自己意識に影響する思考の深刻な分裂を特徴とする。統合失調症患者は存在しない声やものが聞こえたり、見えたり(幻覚)、奇妙な思い込み(妄想)を持つことが多い。統合失調症の主な治療は抗精神病薬である。しかし、抗精神病薬は不快な副作用を起こすことがあり、特に運動障害などは患者が治療を中断するほど重度のこともある。中国からの経験は、TCM(中国由来の医学体系で伝統的な中国哲学と文化の特徴を包含する)のアプローチの一部には、副作用があまりない抗精神病作用があることを示唆している。温胆湯は、統合失調症など重度の精神疾患のための典型的なTCM処方薬の一つである。

エビデンスの検索

2016年2月、Cochrane Schizophrenia Groupの情報スペシャリストは、統合失調症患者を対象にしてWDDあるいはプラセボ/無治療もしくは抗精神病薬による治療を受けるランダム化比較を行った試験を検索した。検索で見つかった記録はすべてスクリーニングを行い、レビュー適格基準を満たし有用なデータを報告しているものだけを対象とした。

見つかったエビデンス

15件の試験(参加者合計1437例)が限定的だが使用できるデータを提供していた。その結果、統合失調症患者の短期的な全体のアウトカムと精神状態に対し、WDDがプラセボまたは無治療と比較して多少の効果がある可能性があるとわかったが、抗精神病薬と比較した効果は示していなかった。ただし、WDDは副作用がより少なかった。WDDと抗精神病薬を併用した場合、全身状態の改善と抗精神病薬による副作用の低減においてWDDの効果が観察された。

結論

本レビューの結果は、WDDが統合失調症患者に対して有益である可能性を示唆しているが、質が低~中程度のエビデンスをベースにしており、確固な結論が出せるほど高い質のエビデンスではない。統合失調症患者のためのWDDの効果を十分かつ公平に試験するためには、より適切にデザインした大規模の試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD012217.pub2】

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