要点
- 胃管の適切な位置を確認するために超音波検査がX線検査に代わる有望な方法であるかどうかは不明である。
- 誤った位置に留置された管を特定する超音波検査の精度を見極めるには、さらなる研究が必要である。
胃管とは何か?なぜ使用されるのか?
食道は、口と胃をつなぐ筋肉でできた管である。うまく飲み込めない場合は、鼻や口から胃管を挿入して、薬や流動食を直接胃に入れることがある。食道は、肺に空気を送る気管に非常に近いため、注意が必要である。胃管の位置がずれて食べ物や薬が気管に入ると、肺に重度の感染症(肺炎と呼ばれる)やその他の合併症を引き起こす可能性がある。それゆえ、胃管を挿入した後にそのチューブが胃内に正しく留置できているかの確認は重要である。正しい位置に留置できたかどうかは、通常X線検査で確認される。
胃管留置の確認において、X線検査から超音波検査に置き換えることがなぜ重要なのか?
超音波は、音波を使って体内の画像を作成する画像診断技術である。特に資源が限られている場所では、X線検査よりもアクセスしやすく、便利かもしれない。
知りたかったこと
胃管留置の確認における超音波検査の精度を調べ、超音波検査が標準的な方法としてX線検査に取って代わる可能性を評価したいと考えた。
実施したこと
胃管留置の確認における超音波検査の精度について、1,939人の参加者を対象とした22件の研究を分析した。
研究結果
ほとんどの研究で、超音波検査は胃管を正しく留置できたかの確認に有効であることが示されたが、胃管の位置が誤っている場合や潜在的合併症に関するデータは限られていた。というのも、胃管の位置が誤っていたのが152人のみであったからである。
これらの研究では、頸部アプローチ、上腹部アプローチ、両者の組み合わせという3種類の超音波法が用いられた。
超音波検査だけでは、胃管を正しい位置に留置できたかを確認するには不十分であったが、他の検査と組み合わせることで胃管の確認に役立つ可能性がある。
エビデンスの限界は?
多くの研究は方法が稚拙であったり不明確であったりしたため、エビデンスの確実性は低下した。
22件の研究のうち8件だけが、通常胃管を必要とする人々を代表していると考えられた。
胃管が誤った位置に留置されている場合の結果はさまざまであった。
今後の研究
胃管留置の確認において超音波検査がX線検査に取って代わることができるかどうか、また、誤った胃管留置による合併症を減らすことができるかどうかについては、より大規模な研究が必要である。
本エビデンスの更新状況
本レビューは前回のレビューの更新版であり、2023年4月時点におけるエビデンスである。
《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2024.10.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012083.pub3》