うつ病治療における頭蓋交流電流刺激療法

レビューの論点

急性うつ病患者における頭蓋交流電流刺激療法(CES)の使用に関するエビデンスを評価した。より具体的には、レビューアらは、急性うつ病患者をCES実治療またはCES偽治療(みせかけ治療)のいずれかに無作為割付けした質の高い臨床試験によるエビデンスの検討に関心を抱いていたが、質の高い研究は見つからなかった。

背景

レビューアらは頭蓋交流電流刺激療法(CES)がうつ病に対する有効な治療法であるか否かを知る必要があると考えた。

うつ病は気分障害で、全般的な抑うつ気分、食欲の変化、睡眠障害、活力の不足、集中力の低下、関心や喜びの喪失、また時には自殺願望を特徴とし、その結果、就労や対人関係における機能低下をきたす。うつ病の診断を確定するためには、これらの症状が2週間以上存在しなくてはならない。

現在、エビデンスに基づいたうつ病治療は、軽症から中等症のうつ病に対しては、認知行動心理学的療法または抗うつ薬がある。重症のうつ病には、抗うつ薬が推奨治療法である。

頭蓋交流電流刺激療法(CES)は、うつ病の症状に対する代替治療法として提案されている。CESは、小さな持ち運び可能な電気装置を用いて頭部に低周波電流を流す治療法である。治療レジメンの一例は、1カ月間毎日30分間、装置を適用するというものだが、装置や治療する症状により治療方法は異なる。米国では、CES装置は処方を要する。他のほとんどの国では、ストレス軽減を目的としたCES装置の販売は承認されているが、うつ病などの特定の疾患に対しては承認されていない。

検索

本レビューのエビデンスは2014年2月まで最新である。

研究の特性

選択基準を満たす研究を見出せなかった。

主な結果

急性うつ病患者を対象としたCESを偽CESと比較した質の高い臨床試験は見出せなかった。現在、急性うつ病にCE Sを用いることを支持するエビデンスは不十分である。

エビデンスの質

急性うつ病治療におけるCES使用に関する質の高い研究は見出せなかった。現在利用できる研究の主な問題点は、うつ病の診断と経過観察に標準化された評価尺度を用いていないことである。

本レビューの資金

レビューアらは本レビューに取り組むにあたり、いかなる資金源からも資金を受け取っていなかった。

利益相反の宣言

レビューアのいずれにもいかなる利益相反はない。

著者の結論: 

急性うつ病治療におけるCESに関する、方法論的厳密さが不十分な研究はあった。急性うつ病治療におけるCESの二重盲検ランダム化比較試験の必要性がある。

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背景: 

うつ病は、世界で罹患率が約1~3%の気分障害であり、世界の疾病負荷の原因として第4位である。現在の標準治療である心理学的療法および抗うつ薬はあらゆる人に有効というわけではなく、向精神薬は重大な有害作用と関連する可能性がある。頭蓋電気刺激療法(CES)は、小さな持ち運び可能な電気装置を用いて低周波電流を流す治療法であるが、最小限の有害作用でうつ病の治療に有効性があると報告されている。本システマティック・レビューでは、急性うつ病の治療におけるCESの有効性および安全性に関する科学的エビデンスを偽治療、すなわちみせかけのCES治療と比較して検討した。

目的: 

急性うつ病に対する頭蓋交流電流刺激療法(CES)の有効性および安全性を偽CESと比較して評価すること。

検索戦略: 

2014年2月24日までのCochrane Collaboration Depression, Anxiety and Neurosisレビューグループの特別登録リスト(CCDANCTR-Studiesおよび CCDANCTR-References)を検索した。この登録リストにはThe Cochrane Library(全年次)、MEDLINE(1950 年から現在まで)、EMBASE(1974年から現在まで)、PsycINFO(1967年から現在まで)の関連性のあるランダム化比較試験が含まれている。CESに関するレビュー論文と書籍の参考文献一覧を調査した。表・未発表を問わず、妥当な試験があるかを知るために、著者、本領域のその他の専門家、CES製造企業に問い合わせた。

選択基準: 

18~75歳の成人を対象とした抑うつ障害の急性期治療を目的としたCESと偽CESとを比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して、選択した研究の原著報告からデータを抽出することとした。評価する主なアウトカムは以下の通りであった。

(1) 標準うつ病評価尺度のスコアの変化に反映される抑うつ症状の低減におけるCESの有効性。
(2) 有害作用による中止率に反映されるCES治療の忍容性。

Review Manager 5を用いてデータを解析することとした。

主な結果: 

本レビューの選択基準を満たす研究はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.8.10]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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