妊娠糖尿病を予防するための食事と運動による併用介入

レビューの論点

妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus :GDM)および母体や新生児に関連する健康上の問題を予防する上で、食事と運動の併用はどのような効果があるのか。これは、2015年に公開された初版のコクラン・レビューの最新版である。

背景

GDMは、妊娠中に血中の糖分が高くなること(高血糖)である。妊娠中の女性の約4分の1がGDMを発症するが、その中でリスクが高い者もいる(肥満女性、高齢女性、特定民族の女性など)。GDMは、女性や新生児にとって重大な健康上の問題に至る可能性がある。短期間では、GDMの女性は、妊娠高血圧腎症(血圧が高いこと[高血圧]と尿中タンパク質の増加)や帝王切開による出産に至ることがある。新生児は在胎週数に対して大きくなる場合があり、その結果、出生時の障害や出産中の母体の障害を引き起こす可能性がある。GDM女性の新生児は、血中グルコースが低くなること(低血糖)や肥満が多くなる。これらの新生児は後の生涯で、感覚障害や2型糖尿病などの健康問題を発症する可能性がある。食事に気を付け、また運動をすることは、2型糖尿病を予防する上で知られており、GDM予防に効果的であると考えられている。

試験の特性

2016年11月時点でのエビデンスを検索し、ランダム化対照試験(randomised controlled trials :RCT)を23件(女性8918 例およびその新生児8709例)を特定した。大半の試験は、高所得諸国で実施された。全試験で、食事と運動プログラムを受けた女性と同プログラムのない標準的ケアを受けた女性を比較した。試験では、評価した食事と運動プログラムと報告された健康アウトカムについてばらつきがみられた。試験結果によって利益を伴う製薬会社や代理店から資金提供を受けていると報告した試験はなかった。

主要な結果

19試験(女性6633例)の結果では、標準的ケアを受けた女性と比較して、食事と運動プログラムを受けた女性でGDMが減少する可能性が示された。運動プログラムを受けた女性について、14試験(女性6089例)では、帝王切開出産の減少の可能性(14試験、女性6089例)、16試験(女性5052例)では、妊娠中の体重増加量減少の可能性が示された。その他の健康上の問題[妊娠高血圧腎症(8試験、女性5366例)、高血圧(6試験、女性3073例)、出生時在胎週数に対して大きい(11試験、新生児5353例)、会陰部外傷(2試験、女性2753例)]について群間差は認められなかった。周産期の新生児死亡(2試験、新生児3757例)、出生時低血糖の新生児(2試験、新生児3653例)、肥満児(2試験、乳児794例)について、2群間で差は認められなかった。母体のうつ状態や2型糖尿病、新生児の死亡や疾患の併合アウトカム、新生児の2型糖尿病や感覚神経障害に対する効果は報告されていなかった。プログラムに対する参加者の見解を検証した。

エビデンスから、食事と運動の併用プログラムはGDMを予防する上で効果的であると考えられるが、これらのプログラムにおける最適な構成要素は明らかにされていない。今後の試験では、行った介入が行動の変化に影響したかどうか、どのように影響したか、また、理想的には試験間で介入が標準化されるかどうか、どのように標準化されるか、詳細に記述するべきであろうまた、それぞれの試験において、母体や乳児に関して同様のアウトカムを評価し、標準的な方法で報告することが考慮されるべきであろう。

エビデンスの質

全般的なバイアスのリスクは、方法に関する情報の欠如のため明らかにされていない。選択された重要なアウトカムについてGRADEを用いてエビデンスの質を中程度から非常に低いと評価した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD010443.pub3】

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