冠動脈性心疾患患者における経皮的冠動脈インターベンション後のTong-xin-luoカプセル

レビューの論点:心臓の血管にステントを設置して血管を拡張する経皮的冠動脈インターベンションを冠動脈性心疾患患者に施行した後の心血管イベント予防に対するTong-xin-luoカプセルの有効性および安全性は?

背景:冠動脈性心疾患は世界的に主な死因である。経皮的冠動脈インターベンションは冠動脈性心疾患の標準治療とみなされており、心臓に起因する胸部痛の症状を改善する。一方で、経皮的冠動脈インターベンションの主な欠点は、心臓の血管が再び狭窄をおこして症状を呈するため、再度インターベンションを行う必要があるということである。これまでの試験で、中薬(中医学の薬草療法)であるTong-xin-luoカプセルが経皮的冠動脈インターベンション後の血管狭窄の再発予防に有効である可能性が示唆されている。

試験の特性:Tong-xin-luoカプセルと従来治療の併用をプラセボと従来治療のいずれかまたは両方と比較した16件(参加者1063名)のランダム化比較試験を組み入れた(文献検索日:2014年6月まで)。すべての試験が中国で実施された。サンプルサイズは50から178で、追跡期間は3カ月から2年間であった。

主な結果:Tong-xin-luoが血管造影によって描出される血管狭窄、心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、心不全など)および再インターベンションのリスクを軽減させる可能性が明らかになった。有害事象はほとんど報告されなかった。

エビデンスの質:15件の試験はバイアスのリスクが高く、精度の低さおよび出版バイアスの可能性が認められたため、すべてのアウトカムについてエビデンスの質は低いから極めて低いと判定された。

著者の結論: 

従来の西洋医学にTong-xin-luoを追加した場合、PCI後のCHD患者において再狭窄および心血管イベントの再発を予防する可能性がある。しかし、出版バイアスが存在するためデータは限られており、対象試験のバイアスのリスクは高い。PCIの効果を評価するためには、さらに質の高い試験が必要である。

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背景: 

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は冠動脈性心疾患(CHD)の標準治療である。PCIから6カ月後の内腔径が50%減少した場合を再狭窄と定義し、この場合、再血管形成術が必要となる。再狭窄はPCIの主な欠点であることが証明されている。Tong-xin-luoは、PCI後の患者における心血管イベントの予防法の一つで、中国で広く使用されているが、その有効性および安全性について系統的な評価は行われていない。

目的: 

CHD患者のPCI後の心血管イベント予防に対するTong-xin-luoカプセルの有効性および安全性を系統的に評価すること。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリのCochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE(OVID)、EMBASE(OVID)、WanFang、Chinese Biomedical Database、Chinese Medical Current ContentsおよびChina National Knowledge Infrastructureを初版から2014年6月まで検索した。継続中の試験および研究のレジストリなども検索した。言語による制限は設けなかった。

選択基準: 

PCI後のCHD患者を対象としたランダム化比較試験を組み入れた。介入群にはTong-xin-luoカプセルを3カ月以上投与した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。相違点は、別のレビュー著者との協議によって解決した。主要アウトカムは血管造影での再狭窄および有害事象の発現であった。副次アウトカムは心筋梗塞、心不全、狭心症、総死亡率、心血管イベント死、再血管形成術の施行、患者の許容性、生活の質および費用対効果であった。二値データはリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)で求めた。

主な結果: 

1063名を対象とした16件の試験を同定した。15件の試験のバイアスのリスクは高く、また、精度の低さや出版バイアスの可能性もあるため、結果の信頼性が低くなった。Tong-xi-luoが血管造影での再狭窄(RR 0.16, 95% CI 0.07〜0.34)、心筋梗塞(RR 0.32, 95% CI 0.16〜0.66)、心不全(RR 0.26, 95% CI 0.11〜0.62)および再血管形成術の施行(RR 0.26, 95% CI 0.15〜0.45)の発生率を低下させるという質の低いエビデンスが得られた。総死亡率(RR 0.38, 95% CI 0.06〜2.56)、狭心症(RR 0.24, 95% CI 0.17〜0.34)および心血管イベント死(RR 0.31, 95% CI 0.08 〜1.12)に対するTong-xin-luoの効果について、極めて質の低いエビデンスが得られている。有害事象はほとんど報告されず、胃腸反応および悪心であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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