L-アセチルカルニチンは脆弱X症候群の治療に有効なのか?

レビューの論点 脆弱X症候群患者に対するL-アセチルカルニチン(LAC)の有効性および安全性を、プラセボと比較し明らかにすることを目的とした。

背景 脆弱X症候群患者には、ごく軽度から重度の知的障害が認められる。その症状には言語発達遅滞などがあり、一部の例では、患者に、注意欠陥多動障害または自閉症スペクトラム障害に関連する行動障害が認められる場合がある。

試験の特性 2015年5月までに発表されたすべてのランダム化試験の科学文献を検索し、本レビューに組み入れるためにわずかに2件の試験を見出した。これらの試験では計83名の少年(6~13歳)を募集し、最大で1年間治療を受けた。

主な結果 LAC治療プラセボとの間に、言語および非言語の知的機能の重要に関する明らかなエビデンスは認められなかった。

教師の評価では、運動亢進に関して、LAC治療プラセボとの間に、に関する明らかなエビデンスは認められなかった。保護者の評価では、各治療の間にいくつかのが認められ、LACが有意であったが、変化は、臨床的関連性を考慮するのに十分な大きさではなかった。

社会能力が評価されたのは1件の試験のみであり、適応行動におけるLACとプラセボとの間のに関する明らかなエビデンスは報告されなかったが、社会化領域における結果では、LACが有意であった。

副作用は報告されず、また介護者の負担に関する副次的アウトカムが報告された試験はなかった。

エビデンスの質 利用可能なエビデンスの質は低かった。LACまたはプラセボに参加者をランダム化するために用いた方法、治療割り付けの隠蔽化方法、および治療の結果に対する評価者の盲検化の方法に関するこれらの試験バイアスのリスクは不明である。

これらの試験への資金提供 これらの試験のうち1件以上が、本結果に商業的関心のある製薬業者から資金提供を受けた。これらの試験のうちの1件では、慈善資金による資金提供も受けた。

著者の結論: 

2件の小規模試験から得られた低い質のエビデンスにより、LACは、プラセボと比較した場合、小児のFXS患者の知的機能または運動亢進を改善しない可能性があることが示された。

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背景: 

脆弱X症候群(FXS)患者には、ごく軽度から重度の知的障害が認められる。その症状には、言語発達遅滞および攻撃または自傷行動などの行動障害、情緒不安定、そして不安に関連する問題(例えば強迫症状および固執行動)などがある。一部の例では、この疾患の患者はさらに注意欠陥多動障害または自閉症スペクトラム障害と診断される場合がある。

目的: 

FXS患者の、心理的、知的、および社会的能力の改善に対するL-アセチルカルニチンの有効性および安全性についてレビューすること。

検索方法: 

2015年5月に、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、Embase、PsycINFO、Web of Science、およびその他の2つのデータベースを検索した。また、3つの試験登録簿、4つの論文データベース、そして関連性のある試験およびレビューの引用文献の一覧表も検索した。

選択基準: 

あらゆる年齢のFXS患者に対する、あらゆる用量のL-アセチルカルニチンの有効性を、プラセボと比較し評価したランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

小児を対象とし介入を比較した試験に対し、2名のレビュー著者が、それぞれデータを抽出し、次の領域における試験バイアスのリスクについて評価した。ランダム化シーケンス生成、割りつけの隠蔽化、盲検化(参加者、職員、アウトカムの評価者について)、不完全なアウトカムデータ、選択的なアウトカム報告、およびその他のバイアス可能性のあるソース。

主な結果: 

小児のFXS患者を対象に経口L-アセチルカルニチン(LAC)と経口のプラセボとを比較したRCTを、わずかに2件見出した。これらの試験は計83名の参加者を対象とし、全員が男性で、1年間治療を受け経過観察された。治療開始時の参加者の年齢は6~13歳で、年齢の中央値は9歳であった。どちらの試験からも、ランダム化、割りつけの隠蔽化方法、またはアウトカム評価の盲検化に関する情報は得られず、説明を求めて電子メールを送った著者らからの返答はなかった。そのため、これらの領域のバイアスのリスクが不明な試験であると格付けした。どちらの試験も、参加者および職員の盲検化、不完全なアウトカムデータ、および選択的報告に対するバイアスのリスクは低いと判断したが、1件以上の試験が製薬会社から資金提供を受け、またどちらの試験でもその会社の社員が研究チームの一員であったため、その他のバイアスのリスクは高いと判断した。

利用可能なエビデンスの質を格付けするため、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)法を用いた。全体として、結果が正確ではなく、その他のバイアスのリスクが高かったため、エビデンスの質は低かった。

どちらの試験でも、心理的能力および学習能力の主要アウトカムに関して、ウェクスラー児童知能検査(改訂版)を用いて小児の言語および非言語の知的機能に関する介入の効果が評価された。著者らは、これらの結果に関する詳細なデータを示さなかったが、治療プラセボとの間に重要は認められなかったと述べた。

どちらの試験でも、Conners' Abbreviated Parent-Teacher Questionnaireを用いて、運動亢進に対する治療の影響が評価された。1件の試験では、小児に関する教師の評価に、に関する明らかなエビデンスは認められなかった(平均差(MD)0.50、95%信頼区間(CI)-5.08~6.08、51名;低い質のエビデンス)。もう一方の試験では、治療を受けた参加者と無治療の参加者との間には認められないことが示されたが、メタアナリシスに組み入れるための詳細なデータは得られなかった。

保護者の評価は、1件の試験ではLACが有意であった(MD -0.57、95%CI -0.94~-0.19、17名;低い質のエビデンス)が、もう一方の試験では有意でなかった(MD -2.80、95%CI -7.61~2.01、51名;低い質のエビデンス)。しかし、変化は、臨床的関連性を考慮するのに十分な大きさではなかった。

社会能力に関して、1件の試験ではVineland Adaptive Behavior composite scoreにおけるに関する明らかなエビデンスは報告されなかった(MD8.20、95%CI -0.02~16.42、51名;低い質のエビデンス)が、社会化領域における結果は、LACが有意であった。(MD11.30、95%CI 2.52~20.08、51名;低い質のエビデンス)。

どちらの試験でも、実薬治療の安全性が評価され、副作用は記録されなかった。選択した試験のどちらにおいても、介護者の負担に関する副次的アウトカムは評価されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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