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褥瘡予防のポジショニング

本レビューの目的

このレビューの目的は、リスクやケアの状況に関係なく、成人の褥瘡予防に最も効果的なことはどれかを明らかにするために、さまざまな体位とポジショニングの頻度を比較することであった。この研究疑問を解決するために、関連するすべての研究(すなわち、ランダム化比較試験を指し、これは参加者がランダムな方法によって2つ以上の治療群のいずれかに割り付けられ、最も信頼性が高いエビデンスを提供する研究の一種である)を収集・分析し、8つの関連する試験と2つの経済的評価を特定した。

2014年に発表されたこのレビューでは、ポジショニングの頻度による効果が不明瞭であることがわかっている。今回の更新には、前回のレビュー時から実施されている新たな試験の結果が含まれている。

要点

成人の褥瘡を予防するためには、どの特定の体位やポジショニングの頻度が最も効果的であるかについては、明確なエビデンスはない。これは、参加者数が少なく、研究方法の詳細が不明な場合が多かったこともあり、研究の質が低かったことが一因となっている。また、様々なポジショニングの頻度や体位の費用対効果を裏付けるエビデンスは限られている。ポジショニングが褥瘡の発生に及ぼす影響を測定し、頻度と位置に関連した最適なポジショニング実施方法を見出すために、さらなる研究が必要である。

このレビューで検討されたこと

褥瘡は、圧迫性潰瘍、圧迫性潰瘍、脱皮性潰瘍、床ずれとも呼ばれ、体の骨の重みを受ける部分への圧力や摩擦で起こる。褥瘡は、骨隆起部の上に皮膚または、その下の組織に局所的な損傷があることで発生する。褥瘡は、高齢者や寝たきりの人に多く発生する。

ポジショニングは、褥瘡の発生を防ぐための戦略の一つである。ポジショニングには、体の向きを変え、特定の部分から圧力を分散させることが含まれる。そこで、筆者らは成人の褥瘡予防に最も効果的なポジショニングの実施方法を知りたいと考えた。満足感、痛み、生活の質に対する様々なポジショニングの効果を調べた。また、筆者らはポジショニングアプローチごとの費用対効果を比較することにも関心があった。

このレビューの主な結果

3,941人の参加者を対象に、2004年から2018年の間に発表された8つの臨床試験と2つの経済分析を特定した。参加者の年齢は55歳から90歳までであった。3つの臨床試験では、2時間、3時間、4時間、6時間ごとにポジショニングを行い、ポジショニングの頻度を比較した。他の3つの試験では、異なる傾きの体位を比較した。

また、2つの試験には費用対効果分析も含まれていた。どの試験にも健康に関連した生活の質、痛み、満足度に関する報告はされていなかった。

褥瘡を防ぐために、ある特定のポジショニングの頻度や体位を推奨するエビデンス質は低く、臨床試験の数も限られている。そのため、どの体位や頻度でポジショニングを行うことが褥瘡の発生を軽減する上で最も効果的であるのかは不明である。参加者の苦痛、満足度、または生活の質について報告した試験はなかった。結果は決定的なものではなく、含まれている試験のエビデンスの確実性は低いか、非常に低いものであった。

このビューの更新状況

2019年2月までに発表された研究を検索した。

訳注

《実施組織》冨成麻帆、迫田季也 翻訳[2021.03.04]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009958.pub3》

Citation
Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, Chaboyer WP. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 6. Art. No.: CD009958. DOI: 10.1002/14651858.CD009958.pub3.