腎移植レシピエントに対する冬虫夏草(中薬)

腎移植レシピエントは、拒絶反応を防ぐために手術後にいくつかの免疫抑制薬を服用する必要がある。しかし、これらの薬物は、患者の長期生存および移植腎の長期生着を損なう副作用を引き起こす可能性がある。

冬虫夏草は、伝統的な中薬として使用される。冬虫夏草は臓器拒絶反応を抑え、免疫抑制薬の使用を減らし、患者を薬物関連の副作用から守ると考えられている。しかし、冬虫夏草の使用は、一般的に中薬を用いて人々を治療するという環境を超えて限られているため、その利益と有害性は不明である。

我々は、腎移植後に用いる冬虫夏草の安全性、利益および有害性を評価した。我々は2015年9月までに発表された文献を検索し、156件の記録を見出した。これらのうち、131件は中国語データベースから、25件は中国語以外の情報源からであった。評価後、中国で腎移植後に冬虫夏草の治療を受けた成人患者447名のデータを提示した5件の研究(6件の報告)を組み入れた。全体として、報告および研究デザインに著しい欠陥があり、利益を過大評価し、有害性を過小評価した可能性があることがわかった。

冬虫夏草とアザチオプリン(免疫抑制薬)とを比較した。患者の生存または腎臓の生着、または臓器拒絶反応の点で治療群間に有意は認められなかった。冬虫夏草を摂取した人々の腎機能、貧血、白血球減少症、肝機能および感染症にいくらかの改善が見られた。

我々はまた、冬虫夏草と低用量シクロスポリンA(CsA、他の免疫抑制薬)の併用と、標準用量CsAとの比較を分析した。治療群間の患者の生存または腎臓の生着、臓器拒絶反応、または腎機能に有意がないことが認められた。冬虫夏草による治療は、CsA投与量の減少、肺感染率の改善、血液中のアルブミン値および尿酸値の改善と関連することが報告されている。冬虫夏草はまた、CsAと使用することで起こり得る腎臓および肝臓の損傷に対する保護効果もあるようである。しかしこの改善は、CsAが低用量であることも一因であろう。

腎移植レシピエントに対する冬虫夏草を調査した少数の参加者による少数の研究であるため、我々のレビューは限界があった。治療効果の観察が非常に短期間であったため、報告されたアウトカムの頑健性が著しく限られた。腎移植後の人々に対する冬虫夏草の利益と有害性を評価する、より大規模でより頑健なランダム研究が、臨床実践のために必要である。

著者の結論: 

冬虫夏草にはいくつかの好ましい面があるものの、利益と有害性の得失評価を明確にするためには長期的な研究が必要である。将来の研究は、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルまたは導入療法など、他の免疫抑制剤と併用して、冬虫夏草の使用を調査すべきである。そのような研究はまた、適切な症例数と検出力を必要とする。

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背景: 

腎移植は、末期腎疾患(ESKD)患者における治療選択肢である。上昇するESKDの有病率に伴い、腎移植の実施数が実質的に増加した。維持免疫抑制療法は、急性拒絶反応および移植腎機能の低下を抑制するための長期治療である。カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンA(CsA)またはタクロリムスなどのCNI)などを使用する免疫抑制療法は急性拒絶反応率を低下させるが、同種移植の長期生存率は有意に向上しない。CNI関連有害作用は、腎移植レシピエントの生活の質低下の一因である。相乗的な免疫抑制効果があり、毒性を最小限にとどめ、副作用を減少させることができる補助免疫抑制療法が最近調査されている。

中薬である冬虫夏草は、中国の腎移植レシピエントの維持療法において補助免疫抑制剤として使用されているが、腎移植レシピエントの補助免疫抑制法として使用するコンセンサスは得られていない。

目的: 

本レビューは、腎移植レシピエントの補助免疫抑制療法として、冬虫夏草の利益と可能性のある有害作用を評価することを目的とした。

検索方法: 

本レビューに関連する検索用語を使用して、2015年9月7日までTrials Search Co-ordinatorを介して、Cochrane Kidney and Transplant Specialised Registerを検索した。また、中国語のデータベースやその他の資料も検索した。

選択基準: 

盲検化や発表言語にかかわらず、腎移植レシピエントに対する冬虫夏草の利益と可能性のある副作用を評価するすべてのランダム化比較試験(RCT)および準ランダム化比較試験を組み入れた。選択基準は、すべての研究群においてベースラインの免疫抑制療法が同じでなければならないことであった。

データ収集と分析: 

2名の著者がデータを抽出した。2値データにリスク比(RR)、連続データに平均差(MD)および95%信頼区間(CI)を用いて算出した。

主な結果: 

我々のレビューは、冬虫夏草を評価した5件の研究(6件の報告、447名の参加者)を組み入れた。研究方法およびデータの報告が限られており、組み入れたすべての研究において、バイアスのリスクは不明と評価された。研究は、冬虫夏草とアザチオプリン(AZA)を比較した研究(4件の研究、265名の参加者)、および冬虫夏草+低用量のCsAと標準用量CsAとを比較した研究(1件試験、182名の参加者)であった。

AZAと比較して、冬虫夏草は移植腎の生着または患者の生存に有意は認められなかったが、移植腎機能が改善され、急性拒絶反応エピソードが減少した可能性がある。貧血、白血球減少症、および肝機能が改善し、感染症の発生率も低下する可能性がある。

低用量CsAと標準用量CsAとを比較して、冬虫夏草は、患者生存、移植腎喪失、急性拒絶反応または同種移植の機能において統計的に有意なを示さなかった。肺感染、血清アルブミン値、血清尿酸値、CNI腎毒性および肝毒性に対する利益を示唆するエビデンスは低品質で限界があった。

組み入れた研究には、生活の質について報告されておらず、追跡は短期間(3カ月〜1年)であった。限られた数の小規模な研究であり、バイアスのリスクが高いことを考慮すると、結果を注意深く解釈する必要がある。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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