分娩時の疼痛緩和のための吸入麻酔

陣痛及び陣痛緩和法は妊婦、医療従事者及び一般の人々にとって大きな関心事である。こうした関心事には、分娩の経過、母子アウトカムの質及び産科医療の費用が含まれる。 疼痛緩和を要する分娩時の女性は、かなりの副作用を生じると思われる硬膜外麻酔など侵襲的な方法及び、その他の疼痛緩和法を用いるべきではない。さらに常時産科麻酔を行える病院でも、硬膜下麻酔は利用不可能と思われ、プライマリ・ケアでは、疼痛緩和の侵襲的方法は全く実施不可能である。 分娩時の女性はいずれも、分娩中に疼痛緩和を望む場合、即時に比較的有効で安全な非侵襲的麻酔法を選択する機会を有する。一酸化窒素及び数種のflurane誘導体などの吸入疼痛緩和薬は、疼痛緩和の追加的方法として非常に有効である。上記薬剤は投薬が比較的容易で、1分かからずに開始でき、1分以内に効果を示す。一酸化窒素はおそらく安全な装置が利用可能で、刺激臭がなく、投与が容易であるため、flurane誘導体より広く知られており、分娩時の吸入疼痛緩和薬として用いられている。 女性2,959名を含む26件のランダム化比較試験対象の本レビューでは、分娩時女性の疼痛緩和としての吸入麻酔の有効性と安全性を検討した。吸入麻酔は分娩時の疼痛緩和に有用と思われるが、対象となる女性に対し悪心、嘔吐、めまい及び傾眠などの副作用について知らせるべきである。 吸入麻酔は外科的出産率(鉗子又は吸引分娩、帝王切開)を増加させたり新生児の健康に影響することなく、陣痛を緩和するのに有用と思われる。flurane誘導体は、疼痛低減及び疼痛緩和の点で一酸化窒素よりやや有効であることが認められたが、一酸化窒素も又、疼痛緩和で無治療に比し有用であった。 一酸化窒素を使用した女性は、flurane誘導体より悪心を経験する傾向が高かった。一酸化窒素を無介入又はプラセボと比較したところ、一酸化窒素では悪心、嘔吐、めまい及び傾眠などの副作用がより高頻度に生じた。 上記試験においては出産経験の満足度又は分娩時のコントロール感に関する情報がなかったため、上記の重要な2つのアウトカムに関するさらなる研究の実施が有効と思われる。

著者の結論: 

吸入麻酔は、分娩時の疼痛強度を低減し疼痛緩和をもたらす上で有効と思われる。しかし、疼痛強度ではかなりの異質性が検出された。さらに、一酸化窒素はflurane誘導体より副作用が高頻度に生じると思われる。flurane誘導体は一酸化窒素より傾眠が高頻度に生じる。吸入麻酔を無治療又はプラセボと比較したところ、一酸化窒素は悪心、嘔吐、めまい及び傾眠などの副作用がより高頻度に生じていた。吸入麻酔のある強度と異なる強度との比較、異なる送達システムの比較又は吸入麻酔とTENSとの比較におけるアウトカムはいずれも有意な差のエビデンスを認めなかった。

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背景: 

多数の女性が分娩中の疼痛緩和を選択し、又分娩中に侵襲的な疼痛管理法を回避することを希望する。分娩時の吸入麻酔では、母親が覚醒状態にあり防御の役割を果す喉頭反射が正常な間に、自己投与により低濃度の吸入麻酔を行う。当該麻酔薬の大半が、投与しやすく、1分以内に投与開始可能で、1分以内に効果をもたらす。

目的: 

経腟分娩予定の母親及び新生児に対する全ての吸入麻酔法の影響を検討する。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register(2012年1月31日)、ClinicalTrials.gov and Current Controlled Trials (2012年6月2日)を検索し、さらにAmerican Society of Clinical Anesthesiaから学会抄録(1990年~2011年)をハンドサーチし、適切な専門家及び試験実施者と連絡をとり、検索した試験の文献リストを検索した。

選択基準: 

吸入麻酔を、その他の吸入麻酔薬又はプラセボ又は無治療あるいは分娩時のその他の非薬物疼痛管理方法と比較するランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

レビューアらは別々に、試験の適格性、方法論的質を評価し、全データを抽出した。精度を保つためデータは二重チェックした。

主な結果: 

本レビューには女性2,959名をランダム割り付けする26件の試験が組み入れられた。

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