多発性硬化症(multiple sclerosis :MS)の管理におけるビタミンD

レビューの論点
ビタミンD補給は多発性硬化症(multiple sclerosis :MS)患者の疾患活動性を低下させるか?

論点
複数の疫学的、免疫学的、および遺伝学的研究から、血中25-ヒドロキシビタミンD低値として測定される低ビタミンDと発症前後のMSとの間に関連性が報告されている。したがって、MS患者はビタミンD欠乏症の検査を受け、免疫調節療法とともにビタミンD製剤投与を受ける。ビタミンD補給が関連する臨床アウトカム(再燃の再発、身体障害の悪化)を改善するか、または磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging :MRI)で認められた病変数が減少するかどうかは、不明である。

実施したこと
本レビューは、MS患者に対するビタミンDの有益性および有害性を評価した。ビタミンD補給の効果を、プラセボ、標準治療、または低用量ビタミンDと比較する、ランダム化対照試験(randomised controlled trials :RCT)および準RCTを対象とした。

わかったこと
系統的検索の結果、MS患者933例が登録された12件の試験を対象とした。ビタミンDには、再燃の再発、総合障害度スケール(Expanded Disability Status Scale :EDSS)で測定した身体障害の悪化、または新規のMRIガドリニウム造影T1病変への効果がないことが、研究で示されている。健康に関連する生活の質および疲労への効果は不明である。ビタミンDは高いバイアスリスクがあると判断した数件の試験でしか評価していないため、これらの結果に対する信頼性は非常に低いと考える。ビタミンD補給は、このレビューが対象としたMS患者に対して安全であると考えられるが、入手可能なデータは少ない。

結論
MS患者に対するビタミンD補給は、関連する臨床アウトカムまたは新出MRI病変への効果はないとみられる。今回のレビューが対象とした試験に用いられた投与量および治療期間におけるビタミンD補給は安全であると考えられるが、入手可能なデータは少ない、7件の試験が進行中で、今回のレビューの今後のアップデートのためのエビデンスがさらに得られるだろう。

エビデンスの更新状態
このエビデンスは2017年10月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD008422.pub3】

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