慢性腎疾患を治療するための黄耆(伝統的な漢方薬)

慢性腎疾患患者は世界中で増加しているが、進行を制御する効果的な戦略はまだ一般的に認められていない。黄耆は、腎疾患の治療に最も広く用いられている漢方薬の1つである。このレビューは、慢性腎疾患患者の治療における黄耆の有益性と有害性の可能性を評価するために行われた。

2014年7月までに公表された文献を検索し、透析治療の有無を問わず、慢性腎疾患患者1,323例を対象とした22試験をまとめた。

今回見出したいくつかのエビデンスでは、黄耆を従来の治療法と一緒に用いた場合、血清クレアチニンが低下し、尿中の蛋白量が減少し、貧血や栄養失調などの合併症の影響が低減する可能性が示唆されたが、エビデンスの質は低かった。試験の方法や報告内容にエラーや省略によって、評価した試験の結果に欠陥があった可能性が高いと考えられる。黄耆の注入に伴って起こりうる有害作用に注意すべきであるが、選択した試験において関連する報告は認められなかった。

著者の結論: 

従来の治療法に対する補助的治療法としての黄耆は、蛋白尿の減少やヘモグロビンおよび血清アルブミンの増加にある程度の効果が期待できると考えられるが、方法論的質が最適ではなく報告内容が不十分であることから、入手したエビデンスに基づいて断定的な結論を導くことはできなかった。

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背景: 

黄耆は、ナイモウ黄耆またはキバナ黄耆(マメ科)の乾燥根である。 腎臓疾患の治療薬として広く使用されている伝統的な漢方薬の1つである。医師や患者が慢性腎疾患(CKD)を管理する上で黄耆を使用するかどうか判断する際にエビデンスが必要である。

目的: 

本レビューでは、CKD患者の治療薬としての黄耆の有益性および有害性の可能性を評価した。

検索戦略: 

このレビューに関連する検索用語を用いて、Trials’ Search Co-ordinatorと連絡を取り合いながら、2014年7月10日までのCochrane Renal Group’s Specialised Registerを検索した。CINAHL、AMED、Crrent Controlled Trials、OpenSIGLE、さらにCBM、CMCC、TCMLARS、Chinese Dissertation Database、CMAC、Index to Chinese Periodical Literatureなどの中国のデータベースも検索した。

選択基準: 

未加工または抽出液として単独使用した黄耆と、プラセボ、無治療または従来の治療法とを比較したランダム化比較試験(RCT)および準RCTを適格とした。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立してデータを抽出し、選択した研究におけるバイアスのリスクを評価した。2値アウトカムには相対リスク(RR)、連続アウトカムには平均差(MD)、および95%信頼区間(CI)を用いて、メタアナリシスを実施した。

主な結果: 

透析治療を受けていた241例を含む参加者1,323例を対象とした22件の研究を採択した。バイアスのリスクは、6研究で高く、残りの16研究では不明と評価された。研究の質は全般的に低かった。

主要アウトカムは、腎代替療法(RRT)または透析開始を必要とするまでの期間および全死因死亡としたが、選択した研究のいずれにもそれらは報告されていなかった。

腎機能に対する黄耆の効果に関する結果は、一貫性を欠いていた。黄耆によって、治療終了時点でのCrClが有意に増加し(4研究、参加者306例:MD 5.75 mL/min、95% CI 3.16~8.34;I² = 0%)、SCrは有意に低下した(13研究、参加者775例:MD -21.39 µmol/L、95% CI -34.78~-8;I² = 70%)。特にベースラインSCrが133 µmol/L未満の参加者において顕著な低下が認められた(3研究、参加者187例:MD -2.52 µmol/l、95% CI -8.47~3.42;I² = 0%)。黄耆によって、治療終了時点での24時間蛋白尿が有意に低下し(10研究、参加者640例:MD -0.53 g/24 h、95% CI -0.79~-0.26;I² = 90%)、ヘモグロビン値が全般的に有意に増加した(4研究、参加者222例:MD 9.51 g/L、95% CI 4.90~14.11;I² = 0%)。特に血液透析患者においてヘモグロビン値の有意な増加が認められた(3研究、参加者142例:MD 11.20 g/L、95% CI 5.81~16.59;I² = 0%)。黄耆によって、血清アルブミン値が有意に増加した(9研究、参加者522例:MD 3.55 g/L、95% CI 2.33~4.78;I² = 65%)。この有意な増加は、透析患者(3研究、参加者152例:MD 4.04 g/L、95% CI 1.91~6.16;I² = 72%)および非透析患者(6研究、参加者370例:MD 3.24 g/L、95% CI 1.70~4.77;I² = 61%)の両方で認められた。黄耆によって、収縮期血圧(2研究、参加者77例:MD -16.65 mm Hg、95% CI -28.83~-4.47;I² = 50%)および拡張期血圧(2研究、参加者77例:MD -6.02 mm Hg、95% CI -10.59~-1.46;I² = 0%)が有意に低下した。

選択した22研究中6研究で、有害作用は認められなかったと報告していたが、残りの16研究では有害作用を報告していなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.6]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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