認知症の激越および精神障害に対する抗うつ薬

著者の結論: 

認知症における激越および精神障害の治療を目的とした抗うつ薬に関する研究は、現在のところ比較的少ない。SSRIのセルトラリンとシタロプラムをプラセボと比較した2件の研究では、激越症状の軽減が認められた。この2種類のSSRIとトラゾドンは、プラセボ、定型抗精神病薬、および非定型抗精神病薬と比較して、忍容性はまずまずであると考えられる。SSRI、トラゾドン、またはその他の抗うつ病薬が、認知症における激越および精神障害の治療に対して安全かつ有効であるか否かを判断するには、今後より多くの被験者で研究を実施する必要がある。

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背景: 

激越および精神障害は、認知症の高齢者によくみられ管理が難しい。現時点で、これら症状の治療を目的として抗うつ薬を使用した場合の有効性および安全性については、ほとんど明らかになっていない。

目的: 

アルツハイマー病、脳血管性または混合型認知症の高齢者を対象として、精神障害および激越の治療における抗うつ薬の安全性および有効性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ 2009年、Issue 3)を含むCochrane Dementia and Cognitive Improvement Group's Specialized Register、MEDLINE(1950年1月~2009年10月)、EMBASE (1980年~2009年10月)、CINAHL(2009年10月までの全日付)、およびPsycINFO(1806年~2009年10月)を検索した。

選択基準: 

認知症の高齢者の激越および精神障害の治療に対する抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗うつ薬、トラゾドン、およびその他の抗うつ薬)とプラセボまたは対照薬(定型または非定型抗精神病薬、抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン系薬、コリンエステラーゼ阻害薬、メマンチン、またはその他の薬剤)を比較したランダム化比較試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験の質を評価し、試験データを抽出した。認知症の神経精神症状評価尺度に従い評価された有効性、および有害作用に関する情報を収集した。その後追加された情報については、著者に連絡をとった。

主な結果: 

合計692例に関する9件の試験を本レビューの対象とした。Cohen-Mansfield Agitation Inventory (CMAI)スコアの変化に関するアウトカムのメタアナリシスでは、SSRIとプラセボの比較が行われていた5件の研究とその他の2件の研究を統合した。激越に対して用いられた抗うつ薬とプラセボとの間で、報告されたCMAI全スコアの変化には有意が認められた[平均差(MD)、-0.89、95%CI、-1.22~-0.57]。しかしながら、これらの結果は1件の大規模試験に大きく影響されていた。Neuropsychiatric InventoryおよびBehavioral Pathology in Dementiaという評価尺度による変化を報告したその研究では、認知症の行動症状の変化について、SSRIとプラセボに有意は認められなかった。シタロプラムとプラセボを比較した1件の研究では、ベースラインのNeurobehavioral Rating Scale (NBRS)の重症度スコアを調整した後にNBRSにより評価したNPSに有意が認められたが、未調整の平均差は統計学的に有意でなかった(MD -7.70、95%CI -16.57~1.17)。有害事象による試験中止率のアウトカムを報告した4件の研究[相対リスク(RR)1.07、95%CI 0.55~2.11]、および全ての原因による試験中止数を報告した3件の研究(RR 0.91、95%CI 0.65~1.26)のいずれにおいてもSSRIとプラセボ間では認められなかった。SSRIのシタロプラムと非定型抗精神病薬のリスペリドンを比較した1件の研究では、NBRSスコア、全ての原因による試験中止数、および有害事象による試験中止数には認められなかったが、UKU副作用評価尺度の合計点で算出した有害事象率は、シタロプラムの方が低かった(MD -2.82、95%CI -4.94~-0.70)。3件の研究が、SSRIと定型抗精神病薬の比較を行っていた。2件の研究のメタアナリシスで、CMAI合計点の変化に統計学的な有意は認められなかった(MD 4.66、95%CI -3.58~12.90)。SSRIは定型抗精神病薬と比較して全ての原因か、または有害事象による試験中止数についてもは認められなかった。トラゾドンとプラセボを比較した1件の研究では、CMAI合計点の変化(MD 5.18、95%CI -2.86~13.22)または全ての原因による試験中止数(RR 1.06、95%CI 0.54~2.09)に有意は認められなかった。トラゾドンとハロペリドールを比較した2件の研究においても、CMAI合計点の変化(MD 3.28、95%CI -3.28~9.85)および全ての原因による試験中止数(RR 0.79、95%CI 0.43~1.46)にもは見出せなかった。

訳注: 

監  訳: 大神 英一,2011.10.4

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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