婦人科癌患者の癌細胞を含んだ腹水の排出方法

背景

癌性腹水は、原疾患である癌に起因する、腹腔内に貯留した体液である。進行卵巣癌や一部の進行子宮癌では、癌性腹水の辛さを緩和するためにドレナージ(閉じられた腔にたまった滲出液・膿・血液などを排出すること)が必要となることが多い。腹水ドレナージに携わる医療専門家を対象としたガイドラインは国・地域ごとに作成されており、通常、臨床医の経験に基づいている。

試験の特性

婦人科癌(女性の生殖器官に発生する癌)患者の腹腔内に貯留した体液の排出を管理する複数の方法を比較した、2019年11月までの試験を検索した。

主な結果とエビデンスの質

2010年に行った最初のレビューでは、関連性のある試験は検出されなかった。今回行った最新のレビューで対象となった試験は1件であり、これは患者245例を対象に、ドレナージ単独の方法と、ドレナージに癌性腹水の治療薬であるcatumaxomab[カツマキソマブ]を併用した方法を比較したランダム化比較試験(RCT[患者が異なる治療に無作為に割り付けられる試験])であった。しかし、これらの治療法の差を評価するには、試験結果は不十分であった。ドレナージとcatumaxomabの併用では、ドレナージ単独と比較して、良好なQOL(全般的な生活状態)が長く維持されていたが、レビュー対象は本試験のみで患者数も少なく、エビデンスの確実性は非常に低い。ドレナージとcatumaxomabの併用群にはいくつかの副作用(例:疼痛、白血球数の減少)がみられたが、詳しい報告ではなかった。現時点で、婦人科癌の癌性腹水に対する最適なドレナージ管理に関するデータは不十分である。

本エビデンスは2019年11月4日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)竹原 順子 翻訳、佐藤 恭子(川崎市立井田病院)監訳 [2020.01.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD007794.pub3》

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