大腸癌手術の際の同種輸血を減らすための術前および周術期のエリスロポエチン

著者の結論: 

現時点では、大腸癌手術における術前および周術期のエリスロポエチンの使用を推奨するための十分なエビデンスはない。

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背景: 

大腸癌の患者には貧血がしばしばみられ、多くの患者は周術期および術後に同種赤血球輸血を受ける。輸血は合併症を伴い、また結腸直腸切除が施行された患者で再発率を増加させるようである。組み換えエリスロポエチンは透析患者で最初に使用され、最近では自己血輸血を容易させるため整形外科領域でも使用されている。癌患者ではエリスロポエチン値が低いと考えられており、エリスロポエチンが貧血を治療し生活の質を改善させるために化学療法の現場で広く使用されている。その使用に伴い有害事象の可能性がある。いくつかの研究で大腸癌手術でのエリスロポエチンが検討されている。

目的: 

本システマティック・レビューの主要目的は、大腸癌手術の施行患者を対象に同種輸血を減少させるうえでの術前および周術期のエリスロポエチンの有効性を評価することであった。副次的な目的は、術前および周術期のエリスロポエチンが、血栓性イベントの発現および周術期死亡率を増加させることなく血液学的パラメーター(ヘモグロビン、ヘマトクリット、網赤血球数)、生活の質、再発率、生存を改善させるかどうかを明らかにすることであった。

検索戦略: 

2008年5月までのMEDLINE、EMBASE、ならびにAmerican Society of Clinical OncologyおよびAmerican Society of Colon and Rectal Surgeonsの年会の抄録を用いて文献検索を行った。

選択基準: 

エリスロポエチンをプラセボまたは無治療/標準ケアを比較していたランダム化比較試験を適格とした。研究では主要アウトカムまたは副次的アウトカムのうちのひとつが報告されており、大腸癌のための手術が施行される患者で貧血を合併している必要があった。

データ収集と分析: 

提供された情報を用いて、試験の方法論の質を評価した。データを抽出し、効果サイズを推定し、適切な場合は相対リスク(RR)と平均差(MD)として報告した。

主な結果: 

全文が検索された10件のうち4件が適格な研究として同定された。エリスロポエチン群とコントロール群の間で輸血患者の割合に統計学的な有意差はなかった。うち1件の研究で、患者1例当たりに輸血された単位数の中央値に、エリスロポエチンの投与を支持する小さな差が示された。血液学的パラメーターの報告は様々であったが、臨床的に意味のある変化を示すエビデンスはない。群間で術後死亡率や血栓性イベントに有意差はなかった。選択した研究はいずれも、再発、生存、生活の質を評価していなかった。研究の方法論の質はまずまずであり、総サンプル・サイズは小さく、従って結果は慎重に解釈すべきである。

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