非小細胞肺癌に対するゲフィチニブと無治療あるいは化学療法との比較

レビューの論点

非小細胞肺癌患者に対するゲフィチニブの投与は生存期間を延長させるか。

背景

肺癌の中で最も多い型である非小細胞肺癌は、世界的にがんによる死亡の主な原因となっている。進行肺癌と診断された患者は、化学療法による治療を勧められることが多い。

ある種の肺癌には遺伝子に変異がみられる、つまり細胞内で染色体の配列が変化していることが明らかになっている。この遺伝子変異が細胞表面にある上皮成長因子受容体(EGFR)に影響し、これがスイッチとなって、細胞は制御されずに増殖し広がっていく。ゲフィチニブはEGFR変異のある細胞を標的として、その細胞増殖を止める薬剤である。複数の研究から、EGFR変異は非喫煙者、女性、アジア系人種、そして肺癌の型のひとつである腺癌の患者に多くみられることがわかっている。

試験の特性

2017年2月17日までの関連する臨床試験を検索したところ、2000年から2017年までの期間に実施された、北米、欧州、アジアを含む複数の国の参加者12,089例を評価した計35件の適格試験が対象となった。

主な結果

本レビューの結果、進行肺癌患者に他の治療を行わない場合または化学療法で治療した場合と比較して、ゲフィチニブは生存期間を延長しないことが示された。一次治療後に進行した肺癌患者では、ゲフィチニブの投与はがんがさらに進行するまでの期間を延長する可能性があるが、これはアジア人またはEGFR変異のある患者といった一部の患者集団に限られた。ゲフィチニブと化学療法の併用はおそらく、ゲフィチニブ単独あるいは化学療法単独の場合よりもがん進行までの期間を延長する。化学療法後に病勢が安定しているEGFR変異陽性患者では、プラセボと比較して、ゲフィチニブによる継続治療に延命効果があることが示された。

赤血球数減少、白血球数減少、神経症状などの重度の副作用はゲフィチニブ群よりも化学療法群に頻度が高く発現した。ゲフィチニブによる副作用には発疹、下痢、肝機能障害が含まれた。

QOLは化学療法よりもゲフィチニブのほうが良好であると考えられる。

エビデンスの質

一次治療および二次治療としてのゲフィチニブを化学療法と比較した結果、全生存期間および無増悪生存期間のアウトカムのエビデンスの質を中等度に下げた。理由は、結果が明確ではないことと、70歳を超える患者のみを対象とした試験が含まれており、これらの結果を全ての患者に適用することは妥当ではないと判断したことによる。ただし、化学療法とゲフィチニブの毒性を比較したエビデンスの質は高いと判断した。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)武内優子 翻訳、廣田裕(とみます外科プライマリーケアクリニック院長)監訳[2018.05.20] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD006847》

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