潰瘍性大腸炎における寛解導入のための未分画または低分子量ヘパリン

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著者の結論: 

LMWHは活動期USの治療に有効である可能性があることを示唆するエビデンスがある。軽度~中等度の疾患がある外来患者を治療するのに、LMWHは、徐放性結腸放出錠により投与された場合にプラセボよりも有効であった。この有用性は更なるランダム化比較研究により確認される必要がある。LMWHがより低用量で皮下投与された場合、同じ有用性は観察されなかった。活動期USの治療におけるUFH使用を支持するエビデンスはない。軽度の疾患がある患者を対象としたUFHの更なる研究も正当化されると思われる。活動期US患者において有用性が認められる場合、直腸出血リスクが高まる可能性と比較考慮する必要があるだろう。

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背景: 

潰瘍性大腸炎(UC)患者に対する治療選択肢の数は限られている。UCでは血栓症リスクが高いことと、血栓性イベントに対する抗凝固療法を受けている潰瘍性大腸炎患者で腸症状が改善しているという観察とをあわせ考えた結果、活動期潰瘍性大腸炎の患者における非分画ヘパリン(UFH)および低分子量ヘパリン(LMWH)の使用を検討する試験が行われることとなった。

目的: 

潰瘍性大腸炎の患者における寛解導入のための非分画ヘパリン(UFH)または低分子量ヘパリン(LMWH)の効能を検討しているランダム化試験をレビューする。

検索戦略: 

潰瘍性大腸炎患者におけるUFHまたはLMWHの使用を検討している全てのランダム化試験を同定することを目指して、MEDLINE(PUBMED)、EMBASEデータベース、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cochrane IBD/FBD group specialized trials register、潰瘍性大腸炎に関するレビュー論文、同定した論文からの参考文献を2010年6月まで検索した。抄録の形でのみされている研究を同定するため、発表主要な胃腸病学会議からの抄録を検索した。

選択基準: 

各々のレビューアは独自に、上記で確認した基準に基づいて、選択に適格かどうかを確定するため、関連性する可能性がある試験をレビューした。Cochrane Risk of Biasツールを用いて研究の質を評価した。抄録の形でのみ発表された研究は、更なる情報を求めて著者らに連絡を取ることができた場合に選択された。

データ収集と分析: 

データ抽出形式を策定し、選択した研究からデータを抽出するのに用いた。少なくとも2人のレビューアが独自にデータを抽出した。あらゆる不一致を合意により解消した。データをITT基準で解析した。主要アウトカムは、これらの研究が定義した寛解の導入であった。同じ治療を評価している場合(UFHまたはLMWH と プラセボまたは他治療の比較)、データを統合した。

主な結果: 

LMWH皮下投与は、あらゆるアウトカム(臨床的寛解、臨床的改善、内視鏡的改善、組織学的改善)に対してプラセボに優る有用性を示さなかった。徐放性結腸放出錠による高用量LMWH投与は、臨床的寛解(OR 2.73;95%CI 1.32~5.67;P=0.007)、臨床的改善(OR 2.99;95%CI 1.30~6.87;P=0.01)、内視鏡的改善(OR 2.25;95%CI 1.01~5.01;P=0.05)に関してプラセボに優る有用性を示したが、内視鏡的寛解や組織学的改善を示さなかった。LMWHは、標準的治療に追加された場合、臨床的寛解、臨床的改善、内視鏡的寛解、内視鏡的改善に対して有用性はなかった。LMWHは忍容性に優れていたがQOL(quality of life)に対する有用性は有意なものではなかった。重度のUCの治療に対しUFHとコルチコステロイドを比較・検討している1件の研究は、臨床的改善に対してUFHが劣ることを示した。有害事象として直腸出血を生じた患者はUFH群でより多かった。