子宮内膜症に対する漢方

子宮内膜症は、月経痛や骨盤痛を引き起こす一般的な婦人病である。治療には手術やホルモン剤があるが、不快な副作用や病気の再発率が高い可能性がある。本レビューは、漢方薬(CHM)「が従来の治療に比べ副作用が少なく、子宮内膜症起因の痛みを緩和するのに有効である可能性があることを示している。しかし本レビューの2件の臨床試験の方法論的な質は悪く、これらの結果は慎重に解釈されなければならない。子宮内膜症治療におけるCHMの潜在的な役割を調査するには質の良いランダム化比較試験が必要である。

著者の結論: 

術後のCHM投与はゲストリノンと同等の効果がある可能性がある。経口CHMは概してダナゾールより有効である可能性があり、注腸CHMと併用すると月経困難症緩和に対して効果的である場合がある。CHMの副作用は、ゲストリノンあるいはダナゾール群と比べて少ない。しかし、子宮内膜症治療におけるCHMの潜在的な役割を正確に評価するには、さらなる厳密な調査が必要である。

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背景: 

子宮内膜症の特徴は、正常な子宮内膜と形態学的および生物学的に類似する組織が子宮外に存在することである。 子宮内膜症の外科治療およびホルモン療法は不快な副作用を伴い、また再発率も高い。中国では漢方薬(CHM)を用いた子宮内膜症の治療が一般的の行われており、痛みの軽減や受胎能力の増強および再発予防におけるCHMの役割に関する研究がかなり行われている。

本レビューは、Cochrane Database of Systematic Reviews (2009年第3号)「のレビューを改訂したものである。

目的: 

子宮内膜症起因の痛みおよび不妊緩和におけるCHMの有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CEN- TRAL) (コクラン・ライブラリ)および英語の電子データベース(MEDLINE、 EMBASE、AMED、CINAHL、 NLH;開始時から2011年10月31日まで)を調査した。

また中国語のデータベースChinese Biomedical Literature Database (CBM)、China National Knowledge Infrastructure (CNKI)、Chinese Sci & Tech Journals (VIP)、Traditional Chinese Medical Literature Analysis and Retrieval System (TCMLARS)やChinese Medical Current Contents(CMCC)も調査した。

選択基準: 

プラセボ、生物医学治療、他のCHM治療介入と比較したCHM、または生物医学治療と比較したCHM+生物医学治療などのランダム化比較試験を選択した。ランダム化手順および子宮内膜症の腹腔鏡診断が確認された試験のみを組み込んだ。

データ収集と分析: 

バイアス評価のリスク、データの抽出および分析を3名のレビュー著者が独立して行った。二変数データの相対リスク(RR)を用いてメタ分析用にデータを結合した。適宜、固定効果統計モデルを用いた。メタ分析に適さないデータは、記述データとした。

主な結果: 

本レビューは、158名の女性を対象とした中国のランダム化比較試験2件についてである。これら2試験共に、適切な方法により行われていたものの、研究の質には限界があった。いずれの試験もプラセボ治療CHMとの比較は行っていない。

腹腔鏡診断後に、CHM群とゲストリノン投与群の症状軽減率の有意差に関するエビデンスはなかった(RR 1.04, 95% CI 0.91 ~ 1.18)。総妊娠率に関してもCHM群とゲストリノン群で有意差はなかった(69.6% 対59.1%; RR 1.18, 95% CI 0.87 ~ 1.59, RCT1件) 。

CHMを経口投与後、漢方薬を注腸した群では、ダナゾール群より症状軽減した女性の割合が高い結果となった(順にRR 5.06, 95% CI 1.28 ~20.05; RR 5.63, 95% CI 1.47 ~21.54)。CHMを経口投与および注腸した群では、ダナゾール群より平均月経困難痛スコアで大幅な減少が見られた(平均差(MD) -2.90, 95% CI -4.55 ~-1.25)。仙腰痛、直腸不快感、膣小瘤圧痛についてはCHM群とダナゾール群に有意差はなかった。

総体的に全群ですべての女性に何らかの症状改善が見られた。CHM群の女性は、ゲストリノン群あるいはダナゾール群と比較して副作用は少なかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.1]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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