大腸癌の肝転移患者にラジオ波焼灼術を用いるべきか?

大腸癌は世界で最もよくみられる悪性腫瘍の一つで患者の約50%は肝転移を合併する(肝臓が第一の転移部位である)。肝切除が唯一の治癒選択肢であるが、標準的外科治療に適した状態にあるのは、大腸癌による肝転移(CRLMs)患者の15%~20%のみである。化学療法のほかに、CRLMs患者の治療のため、肝動脈注入療法、凍結療法、マイクロウェーブ焼灼術、選択的内部照射療法、ラジオ波焼灼術といった低侵襲治療法がいくつか開発されている。この10年間で、ラジオ波焼灼術はその低い侵襲率、死亡率、安全性および患者による受け入れにより、他の焼灼療法に取って代わった。ラジオ波焼灼術は、経皮的または外科的開腹により肝転移の腫瘍内に針を挿入する、低侵襲技術を用いる。ラジオ波を用いて交流電流を生成し針を通して局所組織の温度を50℃~100℃にして「凝固」を起こし腫瘍壊死を生じさせる。数件の研究によると、CRLMs治療に対しRFAは技術的に可能で安全な治療であるが、全生存(OS)、無病生存(DFS)、局所再発という点での有効性についてはほとんど不明である。本レビューの目的は、RFAによるCRLMs治療により、全生存、無病生存、局所再発という点での利益がみられるか検討することであった。本レビューに、ラジオ波焼灼術と他の治療と比較している18件の研究(観察研究を10件、CCTを7件、その後追加されたRCTを1件)を選択した。介入、比較、およびアウトカムに関する異質性のため、データの使用ができず、結論を出すには不適切であった。大腸癌の肝転移の根治療法のためラジオ波焼灼術の使用を推奨するエビデンスは不十分であった。大腸癌の肝転移治療におけるラジオ波焼灼術の使用に関連した可能性のある利益と有害性について答えを出すため、高品質のランダム化臨床試験が必要である。

著者の結論: 

本システマティック・レビューでは、様々な種類のバイアスに対して脆弱な比較臨床試験および観察研究からの情報を収集した。割付け群での患者特性の不均衡が最大の問題であると考えられた。RFAとCTを受けた患者60名とCTのみを受けた患者59名を比較したランダム化比較臨床試験(抄録発表)1件のみが同定された。本研究では、RFA群でPFSが有意に高かったと示された。しかし、全生存についての情報を示せなかった。結論すると、CRLMsに対する根治的腫瘍学的治療にRFAを推奨することについて、選択した研究からは不十分なエビデンスしかなかった。

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背景: 

大腸癌(CRC)は最もよくみられる悪性腫瘍で米国での癌死の第三位の原因である。進行CRCでは、肝臓が第一の転移部位で、CRC患者の約50%に、最初の診断と同時かその2年以内に肝転移が発現する。肝切除(HR)が唯一の治癒選択肢であるが、標準的外科治療に適した状態にあるのは、CRCによる肝転移(CRLMs)患者の15%~20%のみである。切除不能CRLMs患者においては、腫瘍縮小化学療法により切除可能となることがある(16%)。現在の全身化学療法は、切除不能CRLMsに対して唯一の有意な治療であるが、肝動脈注入療法(HAI)、凍結焼灼術(CSA)、ラジオ波焼灼術(RFA)、マイクロウェーブ焼灼術および選択的内部照射療法(SIRT)などのいくつかの局所領域治療が開発されている。この10年間で、RFAはその低い侵襲率、死亡率、安全性および患者による受け入れにより、他の焼灼療法に取って代わった。

目的: 

研究の目的はCRLMsの治療におけるラジオ波焼灼術(RFA)の役割についてシステマティック・レビューを実施することであった。

検索方法: 

CENTRAL、MEDLINEおよびEMBASEデータベースを対象に電子的検索を実施した。Clinical-Trials.gov site(2012年1月2日まで)およびASCO Proceedingを用いてインターネットで現在の試験を同定した。同定した試験の参考文献リストでその後追加された研究についてレビューした。

選択基準: 

CRLMsに対するRFAを他の治療と比較しているランダム化比較試験(RCT)、準ランダム化試験、比較臨床試験(CCT)を選択した。前向きのデータ収集、患者10名以上、平均または中央値追跡期間が24ヵ月である場合、RFAと他の介入を比較している比較コホート研究、一群コホート研究症例対照研究などの観察研究デザインを含めた。RFAの禁忌のないCRLMs患者。切除不能の肝外疾患のある患者も組み入れた。言語による制限は設けなかった。

データ収集と分析: 

上記の電子的検索により計1,144件の記録を同定した。18件の研究を選択した。観察研究が10件、比較臨床試験(CCT)が7件で、2010年ASCO Annual Meetingのハンドサーチで同定したRCT(抄録)1件をその後追加した。イベント発現までの時間データの要約に最適な方法は、生存分析法の使用と介入効果をハザード比として表すことである。選択した研究において、これらのアウトカムが多くの場合二値データとして報告されていたため、各患者の研究データについて著者に尋ね、Individual Patient Data (IPD)メタアナリシスを実施した。研究デザインおよび選択した研究の質が不良であることを考慮し、これらのデータの統合をあきらめ実施しないこととした。

主な結果: 

17件の研究ランダム化されていないため、選択バイアス可能性が上昇したと考えられた。また、すべての研究において組み入れられた参加者のベースライン特性に不均衡が認められた。すべての研究バイアスリスクが上昇していると分類された。STROBEチェックリストで実施した、メタアナリシスに選択したすべての非ランダム研究の方法論的質の評価により、解析した研究の大半においていくつかの方法論的限界を同定できた。現在、選択した1件のRCT(Ruers 2010年)からの情報は、割りつけ隠蔵化の報告のない2010 ASCO Annual Meetingの抄録由来のものであったが、プロトコル原版では割りつけの隠蔵化について適切に報告されていた(EORTC 40004 protocol)。介入、比較およびアウトカムに関する異質性のため、データは適当ではなかった。

訳注: 

監  訳: 柴田 実,2012.10.31

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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